マミちゃん特大パンチ

「マミ様、トドメを」

「言われなくたって! マックスパワーッ!」


 マミちゃんの合図で、ケイスさんが巨大化した。スイカくらいだった大きさが、大玉転がしほどの特大サイズに。


 相手の変貌に、フェラも全力の雷撃を見舞う。


「だから、効かないっつーのよ!」


 フェラのテンプルに、マミちゃんのケイスさんパンチが炸裂した。


 防具でもあり、武器にもなる。玉座に、こんな戦い方があったなんて。


 これが、真の魔王か。


『なぜだ! なぜ勝てぬ!?』

「ただ単に、あんたがヘボだからよ!」


 消滅していくフェラに、マミちゃんは捨て台詞を吐く。


「今度現れるときは、もっと鍛錬を積みなさいよね!」


 マミちゃんがいうと、魔王フェラは完全に消え去った。


「ふー」


 さすがのマミちゃんも、腰から崩れ落ちる。服装も、元のタンクトップと短パンに戻った。仰向けにゴロンと寝転がる。


 ケイスさんも、元の半裸で四つん這いの状態に。


「マミちゃん!?」

「平気よ! それより、先を急ぎなさい!」

「でも、消耗しすぎたんじゃ」


 ボクが心配をすると、マミちゃんは笑いながら首を振る。


「違うわ。急激にレベルアップしたから、身体が順応していないだけよ」

「レベル上昇の負荷が収まったら、追いつきますので」

「行きなさい! 勝つのよ!」


 仰向けのまま、マミちゃんがボクたちにエールを送ってきた。


「うん。ありがとうマミちゃん」


 チサちゃんがトテトテと、マミちゃんの元へ。


「マミ、決勝で」

「ええそうね。決勝で落ち合いましょう」


 手をつないで、チサちゃんはボクを次のフロアへ引っ張っていく。


 やけに手に力が入っているなあ。


「何を急いでいるの?」

「二人だけにする」



 ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ 



「さすがに、こたえましたな」


 ケイスは、マミに声をかける。


「うるさいわね! ちょっと油断しただけよ!」

「しかし、『別の世界線の自分』との戦い、お見事でした」


 あとは、倒した自分を自身の肉体へと融合させるだけ。


 ケイス自身も、そのザラついた感触をその身に受けていた。背中がむず痒くて仕方がない。


「当然よ! これくらい突破できなきゃ、チサには勝てないわ!」


 得意げに語った後、マミがケイスに視線を向ける。


「ねえ、あたしがあんな化け物になっても、あんたはあたしの玉座でいてくれた?」

「もちろん。ワタシは、あなたの玉座です。ついていきますとも」

「でもチサは、耐えられるの? もう一人の自分と向き合ったとき」

「チサ様は、大丈夫ですよ。ただ……問題はダイキ様でしょう」

「ダイキが、負けるっていうの?」


 ケイスは首を振った。


「あの方は優しすぎるのです。もし、もうひとりの自分と向き合うことになったら」


 ゴチン、と、ケイスはマミからげんこつを食らう。


「バカね。そんなわけないでしょ? ダイキは、チサのためなら自分の身体すら差し出して投げ出すわ! ダイキの心が強いことは、あんたも知っているはずよ!」

「そうでしたね」


 魔王フェラの肉体がマミに浸透するまで、まだ時間がかかる。


 それまでは、一休みだ。

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