覚醒したマミちゃん

『我はお主の願望を形にした姿。未熟なお主では勝ち目なし』

「それは、戦ってからほざきなさいよね!」


 魔王【フェラ】の挑発を受けて、マミちゃんは拳を鳴らす。


「力を合わせないとこの魔王は倒せないわ。動きはマミに合わせる」

「どうってことないわ、チサ! 覚醒できるのは、あんただけじゃないんだから! ケイス、融合よ!」


 マミちゃんに呼ばれて、ケイスさんが「はっ」と応答した。


 腕を組み、マミちゃんが気合を込める。


「見てなさい! あたしの本気を!」


 マミちゃんと、ケイスさんの身体が光り出す。ケイスさんがマミちゃんの中へ吸収されて、ドレスへと変身した。


 フェラと同じ猫耳ドレス姿なのに、マミちゃんはまったく体つきが成長していない。フェラは自分の姿を「マミちゃんの理想形」と言っていたようだけど、自分の願望なんだね。


「お見事です。マミ様」


 ケイスさんはというと、大きなクッションのような形になっていた。マミちゃんの周りを、フワフワ浮いている。


「当然よ! このあたしがあんなコンパチキャラに遅れを取るわけないわ!」

「マミ、いくら強くなったからと言って」

「勝てないっていうんでしょ? 見くびらないでちょうだい!」


 チサちゃんの説得にも、マミちゃんは耳を貸さない。


「あんたには、あんたの倒すべき敵がいる。これは、あたしが乗り越えなくちゃいけない壁なの。悔しいけど、今のあんたの方が、あのコンパチより強いわ」

「マミ……」

「だから、見ていないさい。あたしは、マミ・ニム! あんたを倒してあたしは正真正銘の魔王になるわ!」


 マミちゃんが先行する。


 火球や氷の柱で応戦するフェラに対して、マミちゃんは肉弾戦に特化していた。


 本来の魔王としては、フェラの戦い方が正しいのだろう。マミちゃんの戦闘法は、非効率だ。


 しかし、マミちゃんならそんな常識なんてひっくり返してしまう。


 魔王の攻撃を、マミちゃんはインパクトのタイミングで殴って防いでいるのだ。ケイスさんクッションを、グローブ状態にして。


『ジャストガードだと!? なぜだ。なぜ攻撃がすべて受け流される!?』

「ケイスが教えてくれるのよ!」


 魔王の攻撃を、ケイスさんクッションがすべて誘導して防いでいる。


 しかし、かなりのダメージが蓄積されているはずだ。


「ケイスさん、痛くないんですか!?」

「痛いのが欲しいんです! いやあもう、敵の攻撃とはいえ、マミ様の攻撃は最高ですな! ダブルで責めてくださるとは!」


……ああ、そういえば、ケイスさんってそういう癖がありましたね。


「だがやはり、責めてもらうにはホンモノに限りますな」


 珍しく、ケイスさんがマジなトーンで語った。

 言葉は最悪だけど。

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