コンパチ魔王

 チサちゃんも対抗して、カードでヨロイの兵隊を喚び出す。

 ミイラ兵と、ヨロイ兵が交戦する。


「どうして、マミちゃんはボクたちを攻撃するんだろう? ダンジョン攻略して、おかしくなった?」


 わちゃわちゃと兵隊たちが戦っている間、ボクはチサちゃんに質問した。


「いや。あれは完全に別人」

「チサちゃん、どういう意味なんだ?」

「見た目はたしかにマミと同じ。だけど、わたしたちの知っているマミは、あんな態度を取らない。わたしたちを見ても、何も感じていない」


 兵隊に指示を送って、マミちゃんは険しい顔をしている。


 あれは、マミちゃんじゃない。だけど。


「それでも、マミちゃんはマミちゃんだよ。攻撃なんて」

「ダイキは優しい。そういう分け隔てないところとか、大好き」


 チサちゃんは、ボクの手を握りしめる。


「でも、マミならこういう」


 ボクに向けてチサちゃんが言葉を発しようとした時だ。




「ニセモノに取って代わられたまま、死ねるわけないじゃない! おりゃあああ!」


 

 誰かが、魔王マミちゃんにケリを入れた。


「見つけたわ、あたしの偽物め!」


 しゅたっと地面に着地したのは、マミちゃんだ!


 なんと、マミちゃんが二人いる。


「……本人に先に言われた」


 チサちゃんが、頬を膨らませた。


「間一髪でしたな」


 マミちゃんを背中に乗せているのは、ケイスさんだ。


 二人共、ボクの知っている二人である。


「ケイスさん。あの自称魔王って、なんですか?」

「あの魔王は、いわゆる『コンパチ』キャラです」


 コンパチとは、互換性を意味する英語、コンパチブルの略だ。

 格ゲーでいう「色違い」のキャラを、そういう。


「彼女は『マミ様がLロストOオーナーシップになった世界線』から来た魔王です」


 LO……魔王候補の資格を剥奪された存在か。


 じゃああの魔王は、マミちゃんと区別するために【マミー・ニフェルラトゥム】って言えばいいね。

 めんどうだから【フェラ】でいいや。


『ぬうう、おのれ別世界線のマミ・ニムよ。あたしの邪魔をするか!』


 魔王フェラが、マミちゃんを罵る。


「邪魔なのは、あんたの方よっ! あたしの世界にノコノコしゃしゃり出てきてっ! ここはあたしの世界線なんだから引っ込んでなさい!」

『貴様が魔王候補として満足な成果を得られなかったから、あたしは!』

「ゴチャゴチャうるさいのよっ! 魔王になれないのは自分のせいでしょ!」


 マミちゃんが、魔王に言い返す。


「あたしの知っているあたし自身は、できないことを他人のせいになんてしないわっ! 気に食わないなら拳で語りなさいっ! それが【マミ・ニム】の流儀でしょ!? あたしを名乗るなら、グチを垂れ流さないでほしいわ!」


 これだ。ボクたちの知っているマミちゃんで間違いない。


 この傲慢さ・強引さ・豪快さこそ、マミちゃんなんだ。

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