色気より食い気
ボクたちの前には、ベッドが。
もう、リスクなどは気にしなくてもいい。チサちゃんを、どうにでもできる。
チサちゃんの方も、ボクに寄り添ってOKのサインを出してきた。
途端に、チサちゃんの腹の虫が鳴る。
ボクたちは、冷静になっていった。
「先に、食事をいただきますね」
「わかりました。時間はたっぷりとあります。お楽しみください」
セイさんが、腕によりをかけて料理を振る舞うという。
それまで、入浴して待つことにした。
ハダカのままなので、このままお風呂に。
『よう。よく試練を無事に乗り越えたな!』
ドレンが、お風呂場にあるかけ流しの蛇口になっていた。
『色気より食い気か。それでこそ、お前らだよな。やっぱお前ら、最高だぜ』
茶化しつつも、ドレンは称賛してくれる。
ボクとチサちゃんは、肩まで湯に浸かった。
「ああ、いいお湯だね」
「ダイキ、背中流す」
「ありがとう」
チサちゃんに背中を預けながら、ボクは幸せを噛みしめる。
お風呂から上がると、食卓に料理が並んでいた。
メニューはチサちゃんの好きな揚げ物がメインだ。カレーもある。
よほどお腹が減っていたのか、チサちゃんはエビフライを食べるスピードが早い。
「チサちゃんは、もう平気?」
ボクは、トンカツをカツカレーにして食べる。
まだ、変な気分になってはいまいか。ボクは、それが気がかりだった。
「あれだけダイキとイケナイコトしたかったのに、今はゴハンが優先」
チサちゃんもボクをマネして、カツカレーにする。
しかし、チサちゃんは落ち着いていた。本当に、部屋から出ると感覚がリセットされるのだろう。
「時間間隔的には、今はどれくらい経っているのでしょう?」
結構ダンジョンを巡ってきたと思う。
ソレ以上に、消耗が激しい。おそらく、体感時間と実際の時間は相当ズレているのでは?
「ダイキさまたちがこのダンジョンに入ってから、丸三日です」
一日に、一つのダンジョンを攻略した計算か。
「実際には、まだ一六時間くらいしか経っていません。ゲームの世界に入り込んだものだとお考えください」
たしかに、ロールプレングゲームだとすぐに日が沈んでしまうね。
「けど、割と時間はかかってしまったな。眠っておいたほうがいいかも」
「一理ある」
「というわけで、セイさん、仮眠だけで済ませようかなって」
セイさんに、提案してみる。
「休むという意味でも、一度お眠りになったほうがいいかというのは賛成です。が、悔いは残さぬよう」
「というと?」
ボクが聞くと、真剣な顔になって、セイさんが口を開いた。
「これから先は、辛い冒険になると思いますんで」
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