◯ックス探し

 この部屋のドアは、正解のワードを持ってベッドの上に乗ると開く。


 正解だと追うワードを、とにかく探すしかない。


 ボクは普通に黒い靴下を。チサちゃんはルーズソックスを選ぶ。


 ルーズソックスをはいたチサちゃんを肩に抱いて、ベッドの上にチサちゃんと並んで座った。


 チサちゃんは、ベッドの上で悩ましいポーズを取る。


 ブッブーと、ブザーが鳴った。


「これは、違うか」


 次に見つけたのは、デフォルメされた恐竜のクッションである。


 チサちゃんは、しっぽのクッションをお尻にくっつけていた。


「レックス!」


 これも、不正解のブザーが。もう、どれが正解なんだ?


 次は、確定申告の書類を手にベッドへ。


「タックス!」


……違うよね。


「徴収できなかったら、エッチなおしおき」

「それ、ごほうびだよね!?」



 だったら、今度はチサちゃんと一緒にスムージーを飲む。


「デトックス?」


 またまた違った。


「痩せた女のコが好き?」


 チサちゃんが、幼女独特のポッコリお腹をさする。


「そういう意味じゃないよ。次のワードを探そう」



 次に持ち出したのは、箱だ。

 ネコみたいに、チサちゃんが箱の中へ入り込む。


「ボックス?」


 不正解だった。


 ヘアワックスもだめ。


 レコードを手に持ってベッドへ。


「ミックス?」


 違うか。


 今度はCDを。


「リミックス?」


 これも違った。


 ヤバイ、あと二分しかない。

 タイムオーバーになったら、強制的に理性を飛ばされ、チサちゃんと一生夜の営みに励むことに。


「うわあ、どうしたらいいんだ?」


 ボクは、頭を抱えた。何も思いつかない。


 考えている間にも、ボクはチサちゃんとエッチすることだけに支配され続けている。どうにでもなれなんて思考まで、頭に巡ってきた。


 チサちゃんが、ボクの首に抱きつく。

 とどめを刺しに来た?


「ダイキ、リラックス」


 そうだよね。落ち着かないと。


 一度、考えを整理しよう。


 リラックス、リラック……。


「……それだ!」


 ボクたちは、何も持たずにベッドへ乗った。二人であぐらをかいて、目を閉じる。


「リラックス!」



 扉が……開いた!



 ボクたちは、部屋を出ていく。


 あれだけ脳を支配していたセンシティブな考えも、フッと消えていった。



 なにもしないことが、正解だったのか。



 時計を見ると、あと五秒しかなかった。


「おめでとうございます。チサさま、ダイキさま。関門突破です」


 別室にて、セイさんが装備品を返してくれる。


「ありがとう、セイさん」

「一時はどうなるかと思いましたが、必ずダイキさまならやり遂げると思っておりました」


 信じてくれていたのか。


『だから言ったろ? ダイキはヘタレだから、チサには手を出さねえって』


 三角木馬のように変形したドレンが、ジョークを飛ばす。


「たしかにそうかも」

「これで関門は突破いたしましたが、どうなさいます? 『ご休憩』していきますか?」


 別室にも、ベッドが用意されていた。


「こちらには、ペナルティなどございません。思う存分、楽しんでくださいませ」

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