ゼーゼマンの孫

「ワシはチサ・ス・ギルたちと学校に行っている世界観の存在だー。本当なら、ワシはお前の友だちとしてこの世界に現れる予定だったんだぞー」


 アーデルハイドと名乗る少女は、自分こそチサちゃんと友だちになるはずだったと語る。


「世界線」なんて、随分とメタいなぁ。


「そんな世界線があるの?」


 学校があるなんて、思ってもいなかった。


 よく見ると、エィハスも金属製のメガネをかけている。先生役かな?


「ちょっと聞きたいんだけど、エィハスの格好って」

「教師役だ。一応、そうなる世界線もあったようだな」


 こちらもメタい。本人は不服そうだけど。


「そうだぞー。学園モノの世界線から来たのだー。しかし、チサがそのルートを選ばなかったから、ワシのいる世界線は消えそうなのだぞー」


 たしかに、このフィールドもどこか学園っぽい。

 玄室も、まるで教室を思わせる。

 ボクたち以外、誰もいないけど。


「だから、ここで思う存分、学校生活を楽しむといいぞー」

「そういうわけには、いかない」


 アーデルハイドの誘いを、チサちゃんは断った。


「なんだとー? お友だちだって、たくさんいるぞー。お前は優しい世界が欲しいんだろー? だったら、ここでおとなしくしていればいいぞー」

「お友だちなら、もういる」


 そうだ。

 ボクらはこれまで、戦いや遊びを通じて多くの人たちと触れ合ってきた。

 今さら学校と言われても。


「ここで暮らしても、学びがない」

「学校は、勉強するところだぞー」

「必要性は感じている。でも、ここには重要性を感じない。ずっと学生気分のまま、閉じ込めておくつもりかも」


 辛辣な意見を、チサちゃんが告げた。


「なおいう観察眼! おそれいったぞー」


 アーデルハイドは、杖を用意する。


「ここがダンジョンじゃなかったら、食いついていた。でも、ぱぱが仕掛けたワナだったら、留まるわけにはいかない」

「そこまで見抜いていたとは。よほどお前の父親は、信用に値しない男なんだなー?」


 ボクたちの勧誘をあきらめたのだろう。アーデルハイドが杖をボクに向けてきた。


「全盛期の祖父ゼーゼマンを凌ぐ我が魔術、とくと見るがいいー」


 杖をバトンのように、アーデルハイドはクルクルと回し始める。


 一冊のノートが、アーデルハイドの目の前に浮かぶ。


「マジカルノート・ターンアップ!」


 ひとりでにノートがめくれて、魔法少女のイラストが書かれたページで止まる。

「学校は勉強するところ」といっていたのに、本人は落書きするんだね。


 金髪ポニーテールの上に魔女のとんがり帽子をかぶり、青いミニのローブに身を包む。

 アーデルハイドが、魔法少女風の姿に。なんというか、ゼーゼマンを「女体化」したようなルックするに変化した。

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