流れるプールのダンジョン

 次なるダンジョンは、迷路である。


「二〇 ✕ 二〇」マスで構成されて、行き止まりの玄室にはモンスターがいた。

 といってもグロいクリーチャーではない。ぬいぐるみのようにファンシーな生命体だ。


「えい、えいっ」


 モンスター自体は大したことはない。リソースを気にする必要も、ないようである。


「ダイキ、ここに隠し通路がある」

「わかった」


 武器で壁をつつくと、扉が隠れていた。


 このように、隠し扉を発見しないとクリアできない。


 チサちゃんのカンが頼りである。


「しまった。黒い霧のゾーンに入っちゃった」


 真っ暗な切に周囲が覆われていて、前が見えない。

 照明魔法を点けても、同じだ。光を吸収してしまう。


「仕方ない。多分、ここが正規ルート」


 簡単に抜けるわけにはいかないか。


 左手法で行こう。壁に左の手をついて、ゆっくり進む。


「道が途切れたね。こっちだ」

「気をつけてダイキ」

「ボクから離れないで、チサちゃん」


 ボクは玉座なので、チサちゃんと物理的に離れはしないと思う。

 どれだけ離れてもマナが干渉して、チサちゃんと合流できる。


 この機能を使えば、二手に分かれて出口を探す作戦だって可能だ。

 しかし、そんなマネはしない。


「別行動を取らなくても、必ずクリアできる難易度に設定しているはずだ」

「ぱぱの性格なら、ありえる」

「だよね。チサちゃんでもわかるよね。あの邪神の性格を」


 おそらく、二人一組で行動する選択をすれば、最悪の結果が待っているに違いない。


 彼の性格の悪さからして、おそらくトラップがあるのだろう。


「ん!? ダイキッ、つかまって!」


 チサちゃんが、横に引っ張られていく。


 ボクはチサちゃんを抱きかかえて、難を逃れた、かに思えた。足を踏み外し、ボクは水面に落ちる。


「水流!?」


 なんと、ボクたちは川に落ちてしまった。


「流れるプール」


 チサちゃんは、のんきにワイワイ楽しんでいる。まあいいか。

 サメとか流木などのトラップはないみたいだ。

 水も、下水のような汚さはない。

 カルキ消毒もしてある。

 本当に、プールの水であるらしい。


「それにして、二手に分かれなくてよかったね」


 もし別行動を取っていたら、完全に分断されてはぐれていただろう。


 どうやら、チサちゃんが正規ルートと言っていたのは、本当らしい。


 出口らしき光が見えてきた。水流が穏やかになる。


「ダークゾーンを抜けたよ。行こう」


 四階建てのフロアをクリアすると、エィハスが待っていた。完全武装だ。


 フロアボスは、小さい子供だった。

 この少女には、見覚えがない。

 最初はネウロータくんの妹、キュラちゃんかなと思った。

 けど、違う。誰なんだ?



「わっはっはー。ワシはアーデルハイド。ゼーゼマンの孫だぞー」


 ああ。たしか孫がいるって設定だったっけ。

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