ごっこじゃない、ごっこ遊び

「どうだー。強そうだろー? お前たち魔物なんてやっつけてやるんだぞー」

「まあ、かまってあげてくれないか?」


 自信満々のアーデルハイドに対して、エィハスはこちらに慈愛の言葉を送る。


 エィハスの頼みだもんね。わかるよ。


「ダイキ、下がって」


 しかし、チサちゃんは本気モードである。玉座であるボクから降りて、単独で戦おうとしていた。


 そこまでする必要あるかな?


「うけてみよー」


 アーデルハイドが、ステッキから……ブレスを放射した!?


 チサちゃんが魔法のフィールドで防がなかったら、アウトだったね。


「マジカル流星落とし!」


 さっきブレスを吐き出したステッキの先端が、巨大化した。


「肉弾戦でも、魔王は負けない!」


 チサちゃんは、手持ちの杖で応戦する。


 その直後、ゼロ距離からパンチとキックが繰り出された。


「やるなー」

「そっちこそ」


 距離をとった後、魔法の応酬が始まる。


 アーデルハイドが電撃を飛ばす。


 対するチサちゃんは土魔法で、地面を盛り上げた。避雷針を作ったのである。


「なに今の!? すべてが消し飛びそうになったよ!?」


 それだけじゃない。さっきまで学校だったはずの景色まで、変わっているじゃないか。どこかの採掘場みたいな場面になっている。


「今、行われているのは、本気のままごとだ。我々にとってはごっこ遊びだが、彼女たちにはこういう風に映っている。それが、視覚化されているのだ」


 ああ、たしかマミちゃんと初めて会ったとき、砂遊びしたっけ。

 そのときも、リアリティのあるカードゲームだったよな。

 カードのモンスターが実体化して、実際に戦うスタイルだったのを思い出す。

 最終的には、チサちゃんとマミちゃんが本気で戦ったんだ。


「でも、アーデルハイドってエルフだよね? 大丈夫かな?」


 あの子はゼーゼマンの孫だ。

 ゼーゼマンがエルフなので、彼女もおそらくエルフだろう。


「エルフと魔族なら、戦力差は歴然だ。しかし、アーデルハイドは邪神ラヴクラホテプから力をもらっている」


 だから、あれだけの力を発しているのか。


「キミは参戦しないの、エィハス?」

「後見人だ。危なくなったら手を出すさ」


 チサちゃんは氷の魔法を込めたパンチを。


 迎え撃つアーデルハイドは、炎の魔法が付与された膝蹴りを繰り出す。


「ボクたちは、介入しないほうがいい?」

「かもな。これはごっこ遊びだ。飽きたら終わるさ。世界に被害も及ばない。それまで、行く末を見守ろうじゃないか」


 エィハスと、机をくっつけあった。


 二人がごっこに興じている間、お茶をいただくことにする。

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