和解

 もう一つ、気になることがある。

 妙にネウロータくんは、ウチにお土産をくれていた。



「あのお土産ってさ、ボクたちにくれたんじゃなくて、姉であるセイさんにあげてたんじゃないかな? って思って」


「よく分かったな」と、ネウロータくんの顔に苦笑いが浮かぶ。


「そうだよ。お前の言うとおりだ」

 ネウロータくんが白状する。彼もお姉さんが大好きすぎて、玉座にさえ甘んじようとした。


「それを説得されて、ぼくはトシコさんというパートナーを得た。でも本当は、姉さんと一緒に魔王になりたかったんだ」




「ネウロータ……様、なりません」

 兄弟にひざまずきながら、セイさんは首を振る。



「お気持ちは十分分かりました。ですが私はチサ様に仕える身。魔王は引退したのです」




 セイさんが、トシコさんの方を向く。




「どうか、トシコ様。弟と末永くお幸せに」


 涙ながらに語るセイさんの訴えに、トシコさんは黙礼で応えた。


 ネウロータくんも、同様に。


「分かったでしょ? ネウロータくんだって、キュラちゃんと同じ悩みを抱えていたんだ。でも、乗り越えた。だからきっと、キュラちゃんだっていい人見つかるよ!」


 ボクはボクなりに、キュラちゃんを応援する。ボクの声なんて届くか分からないけれど。


 トシコさんが、キュラちゃんに歩み寄って、同じ目線になるようにかがむ。

「キュラちゃん、おこがましいようだけど。私、あなたのお姉ちゃんになってもいいですか?」

 本当にお姉さんのような感じで、トシコさんはキュラちゃんに語りかける。





「私は、お兄ちゃんだけでいい」


 そう言われて、トシコさんの顔が曇る。


「でも」と、キュラちゃんは続けた。







「お友だちなら、なってあげてもいい」







 素直じゃない返答。

 それでも、打ち解け合う姿勢はできたみたい。


「よかったぁ。二人とも」

 ボクは、努力が報われた気がした。


「チサちゃん、本当によかったね」

「うん。ダイキもがんばった」


「ありがとう」

 チサちゃんを抱き寄せて、ボクは涙を流す。



「すばらしい方ですね、ダイキ様は」


「うん。わたしの夫」

 はっきりと、チサちゃんはボクを夫と言い切る。


「またな。色々とありがとう、ダイキ」


「こちらこそ。またおいで」

 ボクは、ネウロータくんと握手を交わした。


「チサ。どうしてお前がダイキを選んだのか、今なら分かる気がする」

 ネウロータくんが、トシコさんとキュラちゃんと手を繋ぐ。


「他人のために涙を流せる。だから、わたしはダイキを選んだ」

 ネウロータくんに向けて、チサちゃんは語りかけた。

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