キュラちゃん改心

「無事だったんですね、トシコさん!」


「私は大丈夫。心配をかけてごめんなさい」

 よかった。トシコさんは持ち直したらしい。


「あのあと、すごかったんだからぁ」

 オンコがニヤニヤしながら言うと、ネウロータくんとトシコさんが頬を染める。


「どうしたの?」

「いやな、完全回復させようと、ポージュースを開けたんだ」


 エィハスの解説によると、せっかく開けたポージュースが、海水に流れてしまったらしい。


 たしかに、海の底で瓶を開けたらね。


「そこでネウロータ殿は、口移しに移行したのである」

 開けてすぐに口に含み、トシコさんに飲ませたとか。


 おかげで、トシコさんは復活したそうだ。


 トシコさんとネウロータくんが、照れくさそうにしている。ネウロータくんは頬をかき、トシコさんはモジモジしていた。共に、視線は合わせない。


「恥ではありませぬ。お二人とも、美しい光景でした。まさに魔王と玉座のあるべき姿」

 茶化すことなく、ケイスさんは二人を賛美する。


「あなたは何も言わなくていいのよ! 二人が最高なのは、二人が分かっていればいいんだから!」

「ひぎぃ!」


 マミちゃんが、興奮するケイスさんをたしなめた。


「とにかく、傷が治ってよかった」


「ありがとうチサちゃん。ウフフ」

 モジモジしながら、トシコさんは微笑む。


 ただ、和やかな輪の中に入れない人影が一つ。


「キュラちゃん、ありがとう」

 ボクは真っ先に、キュラちゃんに礼をいう。


「勇者を倒したのは、アンタだもん」

 うつむきながら、キュラちゃんは返事をする。いつもの怒気がない。もう落ち着いていればいいけど。


「でも、トシコさんを助けたのは、キミじゃないか」

 キュラちゃんはハッとした顔になった。


 自分のことを省みず、キュラちゃんは亜神のパワーをトシコさんに送り込んだ。そのおかげで、勇者の一撃を食らってもトシコさんは持ち直すことができた。


「ねえキュラちゃん、どうしてネウロータくんが、キミを選んだか、ボクはやっと分かったんだ」


「わたしを、キライになったからだもん」

 ボクは首を振る。




「それは違うよ。あのね、ネウロータくんも、セイお姉さんが大好きだったからなんだ」




「おま……!」

 ネウロータくんが、赤面した。たぶん、合っているな。


「なんで、そう言い切れる?」

「セイさんが君のお姉さんだと分かったとき、全部のピースがはまったんだ」


 ここ最近、ボクたちに間で不思議なことが起きていた。

 最初は、関連性が分からなかったけど。


「料理対決の時を思い出したんだ。キミは、ボクが魚醤を使ったのを一発で見抜いたよね」



 お醤油と言っても、よかったのに。

 魚醤だとすぐ分かったのが疑問だった。


「セイさんが魚醤を作ったと、考えたんじゃないかな? お姉さんの味を思い出したんだろうって、ボクは推測したんだけど?」

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