ダイキの怒り

 勇者は涼しい顔で、ボクたちの攻撃を受けている。

 ダメージが通っていないのか、顔は笑ったままだ。

 四人から同時多発的に打撃をもらっているのに。


「手強いわ!」

 マミちゃんも、余裕がない。

 普段は好戦的で、強い相手にはワクワクするのに。

 タンク側に回っているせいか、イライラが募っているらしい。


 まるで、ロボットを相手にしているようだった。




「トシコ、どうしてだもん! どうしてワタシなんて助けたもん!」

 キュラちゃんが、涙を流しながらトシコさんに寄り添う。



「ネウロータくんがあなたの存在を教えてくれたとき、決めたの。絶対に、あなたとも納得してもらおうって。でも、ダメだったわ。私は、あなたを守り切れなかった。あなたが魔王の玉座を探すまで、見届けようと思っていたのに」


 トシコさんのパワーが弱っていくのが、ボクにも伝わってきた。


「しゃべるな! もう寝てろトシコさん!」


「そうさせてもらうわね」

 ゆっくりと、トシコさんが目を閉じる。死んでないといいけど。


「待ってて」

 キュラちゃんが、両手を掲げる。


 ラメェのパーツが、光になってキュラちゃんに集まってきた。

 優しい光を放つ手で、キュラちゃんはトシコさんの傷口をなでる。


 傷は塞がった。あとは、トシコさんが意識を取り戻すかどうか。


 今、ネウロータくんは戦力にならない。ゼーゼマンやベルガと一緒になって、トシコさんに治癒魔法を施しているからだ。


 勇者の剣を押さえ込んでいる、マミちゃんの息が上がっている。ケイスさんに、勇者の蹴りがヒットする回数が増えていた。


 どうすれば。


「質問なんだけど、キュラちゃんって、勇者に倒されなきゃいけないの?」


「違う」と、チサちゃんは首を振る。

「そこまで、致命的な行動は取っていない。まだ未遂。今回の件は、本当にイレギュラー」


 なにか、ボクたちでも看破できないトラブルがあったと。




「チサちゃん、ちょっと本気を出していいかな?」




「ダイキ?」

 ボクの言葉に、チサちゃんが困惑した表情を浮かべる。





「たしか、黒龍ルチャって、レスラータイプの玉座だったんだよね?」


「そう。黒龍拳も、彼が独に開発したプロレス技」


「だったらさ、今こそ使うべきなんじゃないかな」

 容赦のない声色で、ボクは言う。こんな怖い声が出せるんだなと、我ながら思った。



「どうしたの、ダイキ?」



「ボクだって、怒ってるんだ!」


 ボクは感情を爆発させる。


「だってそうじゃないか! どうしてこんなに人が傷つかないといけないんだ! ボクたちの問題じゃないか!」

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