ダイキとネウロータの友情

「ネウロータくん。この子の心を開くためには、キミが必要だ。キミに説得してもらいたい。キミの言葉なら、きっと彼女だって分かってくれるはずだ」

 

 ネウロータくんは、ボクの頼みをうつむきながら聞いている。


「どうして、そこまでしてくれるんだ? ぼくは、お前をバカにしていたんだぞ」


「それはそれ。ボクだって、聖人じゃないから頭にくることだってある。でも、誰かの命が理不尽に奪われるなんてさ、イヤじゃないか」


 消滅するなら、納得した上で消滅すべきだ。

 意外そうな顔をして、ネウロータくんは鼻で笑う。

「てっきり、『友だちだから』とか、安っぽい友情を謳うのだとばかり思っていたよ」


「言ったろ。ボクだって選ぶ権利はあるんだ。トシコさんとは、仲良くなれそうだけど」


「ハッキリ言うなぁ。あはは!」

 やっとボクたちは、本当に仲良くなれた気がする。


 けれど、彼はまだ心を全部さらしていない。彼が何を考えているのか、よく分からないのだ。でも。


「妹さんが相手なら、キミもどんな言葉が必要なのか、分かるはずだ」


 ネウロータくんはチサちゃんの方を向く。


「お前の玉座、すげえな」


「ダイキはそういう人。薄っぺらいセンチメンタルに踊らされたりはしない。考えた上で行動している」

 最上級の賛辞をもらって、ボクは照れる。


「おいキュラ! ぼくは、トシコさんと共に行く。お前はお前の道を行け!」

「どうしてだもん! ワタシだって、お兄ちゃんと一緒に行きたいもん!」



「お前に、一人前になってもらいたいからだ!」

 キュラちゃんは、黙り込む。

「お前はいつも、ぼくの後ろをついてきていた」



「それがわずらわしくなったのかもん?」

 卑屈な言葉を放つキュラちゃんに、ネウロータくんは首を振った。



「違う。ぼくだって、誰かを守っているのは誇らしかった」


「だったら、これからもずっと守って欲しいもん。お兄ちゃんの背中はワタシが守るもん」


 聞き分けのないキュラちゃんに、ネウロータくんも困惑している。 


「ヤバいね。ヤンデレだ」

 オンコが、難しい顔をした。


「悪い子じゃないだけ、タチが悪いな」


 エィハスの言うとおりだ。



 キュラちゃんは寂しいだけで、本心では他の魔王たちをいじめるつもりはない。

 お兄ちゃんに振り向いて欲しいだけ。


「だが、このままにはしておけないのである。ネウロータ殿の人生は、ネウロータ殿のものである」


 さすが老獪ゼーゼマン、まったくの正論である。

 それゆえに、今回の件は難しい。


 どのみち、キュラちゃんを傷つけてしまうから。

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