思わぬ客人
エィハスは、ザリガニモンスターと互角の勝負をしていた。
まさか、三体もいるとは。
「これは、オルエーの森より厳しいな」
危機的状況にいながら、エィハスは思わず苦笑した。
「うわっとっととお!」
浮遊地雷を連れて、オンコが乱入してくる。
だが、ザリガニが二体、地雷の巻き添えになった。
「まったく、もう少しおとなしくできないのかである」
オンコの傍らには、ゼーゼマンが。
「そっちこそ、チンタラやってるからオイラが助けてあげたじゃん!」
「焼け石に水である!」
ゼーゼマンは、別の危機に瀕していた。ホタテ砲台の数が多すぎる。氷の矢で壊しても、数はどんどん増えていったらしい。
オンコも、地雷対策でこちらに逃げてきたという。
「一難去って、また一難か」
同時多発的に、ピンチを迎える。
ザリガニが、浮遊地雷をキャッチした。
エィハスたちに投げつける。
ホタテ砲台に向けて放り投げ、火柱で誘爆した。
「うわ!」
三人とも分断されてしまう。
「学習しおったである!」
「ここまで手強くなるとは!」
どうする? 状況は更に悪化した。
こうしている間にも、地雷は数を増し、ホタテ砲台も集まってきている。
「もうナイフが底を突きそう」
「大魔法で蹴散らすしかないのである。ただ、それをやると神殿が崩壊するのである」
二人の会話に、エィハスは首を振った。
「ひょっとすると、可能かも知れない」
あれだけの爆発でも、壁が壊れていない。
もしかすると、と思ったのだ。
「確かに、エィハスの言う通りかもね。もう試しにやってみたら? 爆発しても壁にダメージないんだからさ。やっちゃえゼーゼマン!」
「うむ!」
ゼーゼマンが高速詠唱により、竜巻を起こす。
竜巻は渦を作り、地雷や炎をザリガニごと巻き込む。
「よし、一丁上がり!」
「まだだ。後ろに!」
背後から、さらに大多数の集団が。
これまでか。
直後、四つ足の物体が、モンスターの集団に突っ込んでいった。
あっという間に、モンスターの大群は消し飛ぶ。エィハスたちが束になっても潰しきれなかった数を、ほんの一瞬で。
「トレーニングにもならないわ!」
「まったくです」
四つん這い状態で、玉座がブレーキをかける。
「む、新手か?」
「いやいや。なんか、助けてもらったっぽい」
オンコがそう言ったので、エィハスは剣を納めた。
「どなたかは知らないが、感謝する」
相手に礼をいう。
「礼には及ばないわ! チサのお友だちがピンチとあってはね!」
彼女の口調には聞き覚えがある。
「あなたは、マミー・ニフェルラトゥム殿!」
ゼーゼマンが、驚きの声を上げた。
大群を蹴散らしたのは、ダイキたちが「マミ・ニム」と呼んでいる魔王、マミー・ニフェルラトゥムだった。
エィハスがパーティを組んでいる魔王【チサ・ス・ギル】と同等の力を持つとされる。
「マミッちの本名って、そんな名前だったんだ!」
「そうよ! アタシはマミー・ニフェルラトゥム、亜神【アクメト】の娘よ!」
腕を組みながら、魔王マミはオンコの問いに答えた。
「誰? 亜神ってもう一体いるの?」
「魔王チサ殿の父【亜神ラブクラホテップ】、通称【ラブホ】と双璧をなす、亜神の一柱である」
資料を頼りに、ゼーゼマンが解説する。
そんな彼女が、どうしてヨソの世界なんかを。
「魔王マミ・ニム。あなたはなぜ、こちらの世界に?」
「緊急事態なのよ! 当然でしょ? 他に理由なんてないわ!」
そうは言うが、今回はイレギュラーだ。介入していいのか?
「お気になさらず。我々が手を出して収まるような事態でもございません」
マミ・ニムに仕える玉座、たしか、【セイケリッド・スフィンクス】、ダイキは【ケイス】と呼んでいたか。【セッ……】とも呼ぶらしいが、直接的すぎて言うのは憚られる。
「そのために、この人を呼んだんだから!」
マミ・ニムが、連れている女性を紹介した。
『まったく世話が焼けるぜ。あのヤロウはよぉ』
「少々、イタズラが過ぎましたね」
彼女は、持ち運んでいる相棒に対し、ため息交じりに返答した。
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