スキュラ
最奥部へ進むと、珊瑚でできた扉が。
「ここです」
ベルガが魔法を唱えると、ゆっくりと扉が開いた。
「大きい。今までのLOより、格段に強そうだよ」
海底神殿の最深部に鎮座していたのは、一〇メートルはあろう白いイソギンチャクだった。巨大な亀の甲羅で全体武装し、珊瑚や煌びやかな貝で表面をデコっている。鉄砲貝のような形をした二メートルほどの砲台が二門、肩から突き出ていた。
「禍々しいね」
「この一帯にいるLOをかき集めて、吸収している」
LOなんてものじゃない。もっととてつもない怪物が、そこにいる。
特に、触手の形状が特徴的だった。似ている。ボクたちのよく知っている存在に。
「え、亜神!?」
そこにいたのは、色違いの亜神だった。
イソギンチャクの中心から、人の姿をした物体が突き出る。上半身だけ。中から出てきたのは……。
「キミは!」
現れたのは、この間お寿司を食べに来た、少女だった。肌はより白くなっていて、少女というより怪物である。
「キミがこの階層のボスだったんだね?」
「いかにも。我が名は『スキュラ・メェルシュトローム』、通称『ラメェ』だもん! お兄ちゃん以外、三層へは行かせないもん! 魔王は、お兄ちゃんだけでいいもん!」
お兄ちゃん? この前も、同じような単語が出てきたな。
鉄砲貝の先が、こちらを向いた。
「ワタシのお兄ちゃんの邪魔をするヤツは、消えるもんっ!」
砲台から、氷の矢が発射される。
「黒龍鱗!」
ボクは、後ろにいるネウロータくんたちごと、黒龍鱗でかばう。やけに響く。それだけ、殺意の高い攻撃なのだ。
「受け止めきれない!?」
レベルMAXを超えたというのに、このLOは、ボクの力すら超えるというのか。
ボクの後ろから、一筋の矢が通り過ぎていった。矢はラメェの砲身に突き刺さり、爆発する。
矢を打ったのは、トシコさんだった。
黒龍鱗を突き抜け、無数の矢がラメェに飛んでいく。
大量の矢が、ラメェの身体に突き刺さった。
ダメージはなさそうだが、痛みでラメェが悲鳴を上げる。
「今よ!」
トシコさんの合図で、ボクは槍から電流を展開した。
雷の渦を起こし、矢に向ける。チサちゃんの魔力も上乗せして、効果は絶大なはずだ。
電気が連動して、ラメェの身体を感電させた。
「ぎやああああ!」
さすがの大型ボスも、雷撃は堪えたようだ。
ボクとチサちゃんによるダブルサンダーによって、ラメェは苦悶の表情を浮かべる。
それにしても、ボスクラスを倒すつもりで攻撃するなんて、初めてだ。あまりいい気分じゃない。
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