分断されていく仲間

 海底神殿の内部は、驚くほど静かだ。


 ヌシ様が兵隊を全て、引き受けてくれたからかも知れない。


「このまま一直線に、ボスのところへ急ごう」

 ボクは、速度を上げようとした。


「待ってダイキ。ストップ!」


 チサちゃんの声が掛かって、ボクは急ブレーキをかける。


「うわあ!」


 次の瞬間、目の前で火柱が上がった。


 壁にへばりついているホタテ貝が、火を噴いたのである。一定のリズムで、開閉をするようだ。


「タイミングよく切り抜ける、一、二、三!」


 チサちゃんの合図で、ボクたちはホタテの火炎放射を抜けた。 


「危なかった。ありがとうチサちゃん」


「ここから先も、手強い敵が来る」


 次のエリアも、ホタテ貝が火炎放射を放ってくる。


「これも、タイミングで抜けるタイプ?」

「違う。これは、こっちに撃ってくる!」


 ボクはとっさに火炎放射をよけた。


「ダイキ殿、吾輩の後ろへ!」

 ゼーゼマンが、魔法で防いでくれた。


「キリがない。この場は行くのである!」

「ありがとうゼーゼマン」


 ここをゼーゼマンに任せて、先を急ぐ。




     ◇ * ◇ * ◇ * ◇



 狭い通路に当たる。


 三体のハリセンボンが、ボクたちの行く手を遮った。


「この!」


 不用意にボクは槍でつついてしまう。


 槍の先に触れると、ハリセンボンが爆発した。他の二体も誘爆する。


「下がってダイキ。ここはアタシに任せて!」


 オンコが投げナイフを取り出し、ハリセンボンに向けて放った。

 ナイフは見事、ハリセンボンの導火線になっている針にヒット、無力化する。


「うわ、こっちはトラップだらけだね!」

 ハリセンボンの地雷原トラップが、ボクたちの行く手を阻む。


「バブルリングなら!」

 ベルガが泡の輪っかで追い払おうとするが、狭い通路では誘爆してしまうだけだ。天井が崩れ、パーティが分散しかける。


「ダメダメ、ベルガ。これじゃ建物が崩れるよ!」

「ごめんなさい!」

「ここの解除はアタシがやる。だから、先へ進んで」


 この場を、オンコが引き受けた。

 オンコが道を作ってくれたが、ハリセンボンはなおも増えていく。


「お願い。でも無茶はしないでね」


「アタシってばリスクジャンキーっつっても臆病だからさ。引き際は弁えてるって」

 ウインクで、オンコは見送ってくれる。



     ◇ * ◇ * ◇ * ◇



 開けた場所に出た。


「どうやら、私にも出番が来たようだ」


 唐突に、エィハスが剣を抜く。


 二足歩行のザリガニ型モンスターが、紳士らしく身構えていた。

「オルエーのダンジョンにいたクワガタより、ちょっと強いくらいだな。ザコは引き受けた。チサはボスの下へ」


「わかった。気をつけてエィハス」


「平気だ。これまでお前と、修羅場をくぐり抜けてきたからな」




 最深部へ向けて、ボクは泳ぎ出す。



 後ろでエィハスの剣と、ザリガニのハサミがぶつかり合う音が鳴った。

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