第五章 回転寿司屋さん完成!

回転寿司屋さん、オープン!

 ボクたちは、回転寿司の店をオープンした。


 ビントバーやズースミックだけではなく、ルセランドやゴマトマからも人が集まっている。


 物珍しさから人が沢山来るだろうと考えて、大きな店を構えたのだが。


「すごい行列だね」


 ボクたちはお寿司にありつけるかな。


「今日は、見学だけにしておこうか?」


 お客さんの入りは上々だ。

 この繁盛振りは、ユニークさだけの成果ではない。

 本当に美味しいんだろう。


 お寿司は、舞台裏でも食べられる。


 ボクたちは経営者だから、裏手に回ってもいい。


 しかし、チサちゃんは客席にこだわった。


「なにか分かることがあるかも知れない」


 だよね。チサちゃんなら、きっとこう言うと思っていた。

 こんな楽しいイベントを見過ごすはずがない。


 ボクたちは行列に並び、順番を待つ。


 三〇分ほど待っただろうか。ようやく席順が回ってきた。


 レーンは正方形に動き、それぞれの角に職人が立つ。

 ちゃんと、レーンが作動している。


 それだけで、ボクは軽く感動していた。

 まさか、異世界で回転寿司に出会えるなんて。


 さすがに、お茶を淹れるコーナーまでは作れなかったけどね。

 カウンター席を選び、チサちゃんは回る寿司を眺める。


「見ているだけでも、楽しい」

「好きなお寿司を取ってね」


 ボクはチサちゃん用の小皿に、しょう油を入れてあげた。


 先に、ボクは瓶に入ったガリを食べる。

 うん、甘辛さが丁度いい。

 さすがポージュースを作った天才調合師だ。


「おいしい!」

 サビ抜きのサーモンを一貫食べて、チサちゃんがハシャぐ。


「脂がのってて、なのに歯触りが軽い」

「ホントだ。ちょっと教えただけなのに、しっかりお店の味になってるよ」


 エィハスの一家は、本当にプロだな。


「気に入ってもらえたなら、うれしい」


「え、エィハス!」


 カウンター裏にいた職人の一人が、なんとエィハスだった。


「エィハス、似合ってる」


 今、エィハスの衣装は寿司職人風である。


「ありがとうチサ。でも、慣れないな」

 照れくさそうに、エィハスは笑う。


「あれ、本格的に転職したの?」

「まさか。担当が休憩に入ったから、変わったんだ」


 やはり本格的な職人には敵わず、エィハスの手つきはおぼつかない。それでも、愛情が込められていた。


「から揚げ巻き!」


 ミニから揚げがのった軍艦に、チサちゃんのテンションが上がる。


「そうか? 私は刺身をうまく切れないからな。せめてジョークなネタでも担当しようかと思って、作ってみたのだが」


 エィハスオリジナルのネタを見て、ボクはふと気づいた。


「これいいよ! 小さい子どもがめちゃ喜ぶ!」

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