電力のヒント
「マミちゃんは、ヌシを釣ったの?」
「ただのLOだったわ! 食材にもならないから、秒で退治したけど!」
食いしん坊のマミちゃん的には、ゴハンになる方がよかっただろうなぁ。
おかしいぞ。みんなイベントの内容が違う。
「チサちゃん、魔王のみんなが挑んでいる課題って、別々だったりするの?」
「課題のクリア条件自体は共通。でも、各世界によってイベントの内容は変わっている」
ヌシが目標の場合もある。
あるいは、追加イベントのフラグの役割を果たすらしい。
ボクたちは、フラグの方を引いたワケか。
「じゃあさ、追加イベントを要求されるのって、メリットがあるの? それともペナルティなの?」
「厳密にはペナルティ、かも」
自信なさげに、チサちゃんは答える。
「まあ、ペナルティでしょうね!」
対照的に、マミちゃんは堂々と言った。
魔王同士でカードの奪い合いをしている場合は、イベントは優しくなる。普段からプレイヤー同士で争っているから。
逆に、チサちゃんのように魔王同士の争いに興味がなく、自国の発展イベントを優先してこなしていると、イベントがキツくなるらしい。
聞いている限りだと、ネウロータくんは国の発展に関心はないみたいだ。
好戦的なマミちゃんも、あまりキツいイベントなどは起きてないと見える。
マミちゃんの口ぶりだと、全ての魔王でもっとも大きなイベントを経験しているのは、チサちゃんだけだという。
うまいこと、バランス調整が成されているな。
「何よりあの水車……あ」
どういうわけか、チサちゃんは水車を見たまま固まっている。
「何かあった、チサちゃん?」
ボクは、チサちゃんの見ている先に目を向けた。
水車が均等に動いているだけ。
いや、これこそがヒントだった。
「そうか。水車を使えばいいんだ!」
「どうしたのダイキ? 珍しくゴキゲンに見えるわ!」
事情を知らないマミちゃんが、キョトンとしている。
「ありがとうマミちゃん! おかげでこっちの抱えていた問題が解決しそうだ!」
ボクはマミちゃんと強引に握手をかわす。
「ごちそうさまでした、ケイスさん。ぜひウチにも食べに来てください。おいしいものをご用意して待っています」
「ぜひ窺います。お元気で」
◇ * ◇ * ◇ * ◇
チサちゃんの国に帰宅後、ゴマトマでオンコと話す。
「風車よりかは水車かなとは思うけど」
水車と風車の力を利用すれば、補強とバランス調整用の魔力だけで済むだろうという。
戻ったボクたちは、水車をすぐに使えないかオンコに尋ねてみた。
「ううーん。あ、そうだ。あれって役に立たないかな?」
オンコは、ゴマトマに水車があることを教えてくれた。小麦粉をひいているという。
「ダイキ、そういえば」
川沿いのソバ屋に、水車小屋があった。
「同じ水車を扱っている業者だから、すぐに連絡を入れておくよ」
「ありがとうオンコ!」
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