流しそうめん
「お邪魔します。涼しい!」
中に入ると、ヒンヤリとした空気が漂う。
空調が効いているのかな?
「たぶん、あれ」
チサちゃんが、中央に位置する物体を指さす。
大きな氷の巨人像が、宮殿のど真ん中にそびえ立っていた。
マミちゃんを象っている。自己主張が激しい。
「ホントに王様なんだね、マミちゃんって」
「マミはエリートだから」
たしかに、チサちゃんにはない発想だ。
先へ進むと、赤い絨毯の敷かれた部屋に。
贅を尽くしたという感じじゃないけど、清潔感がある。
「よく来たわね!」
王の間には、マミちゃんがブドウを食べていた。
「マミちゃん、偵察に来たよ」
「話はセイから聞いているわ! ちょうど、準備が終わったの! ついてきなさい!」
言うなり、マミちゃんはボクたちの手を引く。
「どこへ連れて行くの?」
「これから、イベントをやるの!」
なぜか、マミちゃんはボクたちを山へ連れて行く。
海ではないのか。
「何があるんです、ケイスさん?」
「それは、見てのお楽しみで。けれど、きっとご満足いただけますよ」
文句を言わず、ケイスさんは土の道を四つん這いで進む。
「痛くないですか? ご無理なさらないで」
マミちゃんを乗せながらの歩行だから、余計に心配だ。
「苦痛は、ワタシの生きがいなのです。痛みがあるほど、生きているという実感が湧くのです」
ボクには理解できない世界に住んでいるな、ケイスさんは。
「いやぁ、涼しいね、チサちゃん」
木々が日差しを遮って、風が気持ちいい。山もいいなぁ。
「で、会場がココになるわ!」
ボクたちが案内されたのは、竹を組み上げた流水施設。いわゆる「
「まだ試作段階だから、完成に協力してちょうだい!」
「そうか、流しそうめんがあったね!」
失念していた。
お祭り好きのマミちゃんらしい発想だ。
ケイスさんが外国風の人だから、和的な発想はないと高をくくっていた。
「ねえダイキ、流しそうめんって、何?」
チサちゃんは知らないらしい。
「そうめんというオソバ? を、水に流すの! それをすくって食べるのよ! 竹を手に入れたからネウロータに何かアイデアをもらったら、これがいいんじゃないかってね!」
マミちゃんも、ネウロータくんと接触しているんだな。
説明を受けながら、ボクたちはおつゆの入った竹の器と、お箸をもらう。
「一〇〇回説明するより、見た方が早いわ! 準備しなさい!」
説明が面倒になったのだろう。実践してみせることになった。
エジプト調の衣装を着た召使いさんが、そうめんの入ったザル
を持つ。階段を上がって、定位置に付いた。
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