ベルガにお願い
「電気だっけ? そういう力は知らないねぇ」
オンコですら、分からない力のようだ。
「でもさ、ウチの子分を雇ってくれたら、手動で回してあげるけど?」
オンコの提案は、こうである。
大型船を漕ぐ要領で、中に人を入れて歯車をレバーで回そうか、と。
「いやいや、都市伝説じゃあるまいし」
「都市伝説って何?」
「日本のレストランにはね、カニ専門店ってあるんだ。そこには動くカニの看板があってさ。中に人がいて、手動で動かしているというウワサがあるんだよ」
もちろんデマである。
「なにそれ興味深い」
「いや、中の人が死んじゃうから」
看板の案はナシだ。
「そういえばダイキ、このビントバーは移動要塞。動かすには、何か秘密があるはず」
言われてみれば。
ベルガさんのいる、ビントバーの宮殿へ。
「まあ、お待ちしていましたわ」
話を聞きつけて、ベルガさんが待っていてくれた。
「すいません、ベルガさん」
「もう、堅苦しいお言葉はおやめになって。ワタクシたち、共に共闘した仲ではありませんか」
なんと、ベルガさんは冒険者ギルドに登録したという。
ヒーラーとして。
「呼び捨てでも構いません」
「じゃあ。でも、どうしてまた、ベルガは冒険者に?」
「同じ姫であるオンコさんが旅をしているのです。ワタクシだって」
確かに。
一人旅をするあたり、ベルガ自身も相当アグレッシブな性格かと思う。
「そんな。オンコみたいな性格ならともかく」
あまり戦闘に向いた性格じゃないと思うが。
「ん? 今すっごい失礼なことを言われた気がするけど?」
オンコが頬を膨らませた。
「元々、世界を旅するのがワタクシの夢だったのです。要塞で引きこもるのではない、自由な生き方を」
しょっちゅう家を空けているって、ベルガは言ってたっけ。
「それで、あなたがたのパーティに入れたもらいたく」
「構わないけど、戦えるの?」
ベルガは困った顔をする。
「ワタクシは非力ですので、魔物を追い払うことしかできません。が、ヒーラーとしてなら助力できますかと」
「うん。歓迎するよ」
チサちゃんも「お友だちが増えた」と楽しそう。
「一気に生存率が上がったね!」
「魔法使いはいるが、専門職のヒーラーはいなかったからな」
他のメンバーも、喜んでいる。
「よろしくベルガ」
「魔……チサさん。今後ともご贔屓に」
チサちゃんはもう、ベルガにとっては「この地を統べる魔王」ではない。旅の仲間だ。
だから、呼び名も変わる。
ベルガも仲間に加わったことで、本題に。ひとまず、回転寿司の解説をした。
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