ミッション:回転寿司屋を開こう

 装備ができあがるまで、他にすることがなくなった。一旦、魔王城に帰ることに。


「チサ様、ダイキ様。またも課題でございます」


 また、亜神から課題がきたらしい。


「また名物作り、かな」


 これまでボクたちは、海洋都市まで手に入れたから、またそうなる可能性は高い。


「ビントバー産の材料を使った料理だって」


 やはり、名物料理の開発だ。


「岬どころじゃなくなっちゃったね」


「まずは課題を済ませる。デートはいつでもできる」

 少しガッカリしていたけど、チサちゃんは冷静な顔になった。


「そうだね。ボクは、チサちゃんと一緒にいられるだけで幸せだからね」

「わたしも」


 ボクが笑うと、チサちゃんも顔をほころばせる。


「個人的には、海苔かな」


 味も食感も最高だった。あの海苔を使った料理は、きっとおいしい。


「他に条件は?」

「ゴマトマの食材も使うこと」


 名目上は、ゴマトマとビントバーとの友好を深めるための料理が欲しいんだとか。


「ダイキ、ゴマトマで一番好きな料理は?」

「お米だね」


 ボクが日本人だからかも知れないけど。


 そうはいっても、ゴマトマのお米は最高だと思う。

 ふっくらしていて海苔と合う。塩むすびにしただけでも最高だった。


 けれど、貧乏舌なボクでは、それ以上発想が膨らまない。


「ビントバーのお魚を、ゴマトマのおにぎりに詰める」

「コンビニのおにぎりみたいだね」


 だが、チサちゃんの発想が、ボクにひらめきをくれた。




「そうか、お寿司だ!」




 いつぞや先輩に連れて行ってもらった軍艦のうに巻きが、頭に浮かぶ。


 海産物が採れる街には、決まってお寿司屋さんがあるじゃないか。


 こっちにずっといたから、すっかり頭から抜け落ちていた。


「この世界はお刺身こそあるんだけど、お寿司という食べ物はないんだ。作り方は一通り伝えられるかなって思うけど」


 ビントバーの新鮮な魚と海苔で、ゴマトマのお米を包む。

 美味しいに決まっているじゃないか。


 想像しただけでもお腹が空いてくる。




 でも、お寿司って高級品だよね。




「あの味を、庶民でも食べられるようにするには、回転寿司なんだけど」


 ボクは記者時代、高いお店しか連れて行ってもらっていなかったから、「回転寿司」というワードがなかなか出てこなかった。


「回転寿司って?」

「お寿司の乗ったお皿がレーンの上を回って、それを取るんだよ」


 チサちゃんの想像力を働かせるために、ボクは軽くジェスチャーをしてみせる。



「楽しそう!」

 チサちゃんの好奇心に火が付く。



 よし、回転寿司がこっちでもできないか、考えてみよう。

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