海苔に大興奮

「お、あぐらをかくスタイル、いいね!」

 行儀悪く、オンコはジャンピング後にあぐらをかく。


「ゴマトマ王国の姫様から、そう仰っていただけるとは」

「ビントバー様、もうオヤジみたいな堅い話は抜きで」


「承知致しました。では、ご堪能下さい」

 宴が、ヌシ様の合図で始まった。


「この酒は、実にいいものでありますな」

 ゼーゼマンが、出されたお酒を絶賛する。


「サトウキビから作った、ラム酒でございます」

 この世界にも、ラム酒があるのか。すごいなー。


 ボクは飲めないので、チサちゃんと一緒にジュースだ。


 ヌシ様が、ボクたちにご馳走を用意してくれた。ゴハンとお刺身、海藻のサラダ、フルーツとラム酒を使ったムースである。どれもおいしそうだ。


 やけにエィハスがおとなしいと思っていたら、ひとり無言でカニをむさぼっていた。そうなるよね、カニを食べていると。


「天ぷらが最高」

 ボクとチサちゃんは、白身魚の天ぷらを粗塩でいただく。


 チサちゃんのホッペがこぼれ落ちそうである。


「あの、よろしいのでしょうか。お料理はこんなものしかございませんが」


 ベルガさんが、やけにかしこまった。ゴマトマ王国のご令嬢がいるせいか、「もっとおいしいものを食べている」と思っているのだろう。


「ご謙遜なさらないで。ボクたちには贅沢で……」


 薄く平たい紙のような物体と、ドロッとした調味料である。


「これは……!」


 まさか、と思いながら、ボクは黒い紙状の物質を口へ。


 パリッと言う懐かしい音と共に、ボクは海の恵みを一身に噛みしめた。


「海苔だ、これ!」

 海苔の天ぷらに出会えるとは。


「しかも岩海苔に、味付け海苔だよ! ゴハンの嫁! ゴハンのズッ友だ!」


「ダイキ、テンション高すぎ」


 これがアゲアゲにならずにいられるか、と。


「だって海苔だよ! この異世界に来て、海苔が食べられるなんて!」


 ボクはゴハンをかき込む手を止められない。海苔は大好物だったんだ。


「チサちゃんもどうぞ。こうやって、巻いて食べるんだ」


 ボクのマネをして、チサちゃんは海苔でゴハンを包む。

「んっ、おいしい!」

 一気に、チサちゃんの顔が明るくなった。


「確かにうまい! 海苔って最高じゃん!」

 オンコも、海苔の美味しさに気づいたらしい。


「この岩のりというのも、甘辛くて珍味である。実に酒に合うのである」

 ゼーゼマンも、お酒のツマミとして気に入ってくれたらしい。


「これは、新メニューに加えるべきだと母に進言せねば!」

 もっとも気に入ってくれたのはエィハスで、ひたすら海苔を使った料理の調理法を、しきりにメモしていた。

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