第四章 街作りミッション。回転寿司屋さんを建てよう。

ヌシとの対面!

「では、あらためてようこそ、ビントバーの街へ」

 貝殻が開いて、ようやくビントバーの街が全貌を現す。


 島ほどの大きさがあるホタテ貝の上に、大都市ができていた。


「ねえ、動いてません?」

 よく見ると、こちらに近づいているような。


「島全体が、巨大な移動要塞なのです。けれど、海賊などに航路を阻まれると、お手上げなのです」


 一度、ズースミックへ進路を取っているという。

 停止していた交易と、要塞の修復をするためだ。


 ビントバーの要塞から橋が架かって、ボクたちの乗る船に取り付く。


 ベルガさんに先導してもらい、ビントバーの街を回った。


 自分の足で街を歩きたくなったのか、チサちゃんはボクから降りた。


 ボクも、チサちゃんと手を繋ぐ。


「ゴマトマとは、また違った豪華さだねっ!」


 ドワーフのお姫様であるオンコは、町の発展具合に興味を示す。


 やはりというか、エィハスは食事事情が気になるらしい。しきりに、飲食店に目を向けていた。


 ことゼーゼマンに関しては、言うまでもないだろう。目線はスケベだ。


「わきまえなよ、ゼーゼマン」

「失敬である。イエス、マーメイド・ノー、タッチのスピリッツは失っていないのである」

「ダメダメじゃん。どどめ色の脳細胞じゃん」


 ゼーゼマンが興奮するのも、無理はないと思えた。

 街行く人魚族たちは、美男美女が多い。

 足にヒレはなく、二本足で歩いている。パレオや腰蓑をはいていた。


「足があるんですね」


「ヒレを使うのは、泳ぐときだけです。歩くときは普通に足を用いますよ」


 街にいるのは、人魚族だけではない。

 半漁人というか。魚の頭や、フグの頭を持つ種族もいた。


 焼き牡蛎の屋台をしているのは、サメ頭の男性である。

 行列ができていて、一時間待ちだそうだ。


「人魚でも、色々いるんですね」

「我々の側からすれば、人間は珍しい生き物ですよ」


 それぞれの国には、それぞれの文化があって、考え方も違う。ボクは改めて気づかされた。


「さてみなさん、ヌシはこの先におりますわ。ついていらして」


 ベルガさんが向かう方向には、珊瑚でできた宮殿が建っている。外壁が虹色で、街のどんな施設よりも輝いていた。


 門の前に、真っ白いタキシードを着た半漁人が立っている。顔はナマズを思わせた。


「まあ、お父様! 恩人をお連れしましたわ」


 駆け足で、ベルガさんが半漁人さんと抱き合う。どうやら、彼がベルガさんの父親らしい。


「これはこれは。ようこそ、おいでくださいました」


「あなたがヌシ?」


 チサちゃんが尋ねると、ヌシは微笑んだ。


「はい。魔王サマ。ワタクシがこの要塞のヌシ、ビントバー王でございます」


 ヌシは、この街で最も背が低かった。

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