報酬はヌシとの対面で

「みんな無事だったんだね」

 船に戻ると、全員が満身創痍だった。

 船はボロボロで、動くのがやっとである。


「間一髪だったな、ダイキ」

 青空を仰ぎながら、エィハスがボクに激励をくれた。


「これまた、奇っ怪な妖術使いであったな」

 ゼーゼマンに、ドクロの破片を鑑定してもらう。


 過去に溺れ死んだ妖術使いが、自身の乗っていた軍用戦艦ごと亡霊化して、強力なアンデッドになったのではないか、という。


「グッジョブ、ダイキチ、チサッチ!」

 サムズアップを、オンコが返す。


「ところでさ、海賊共がどいつもこいつも豪華なアイテムを持っていたんだけど?」


 ジャラジャラ、と、オンコは金貨や珍しい形の貝がらなどを手に持っていた。


「ふむふむ。魔力的に価値の高いモノまで混ざっているのである」

 魔術師ゼーゼマンお墨付きの品らしい。


「どうしよっか。ドロップアイテムだとしたら、大収穫なんだけどなー」


「ゲットしないのか?」

 エィハスの問いかけを、オンコは肯定した。


「あまりにキレイすぎるんだよ。これは、誰かが落としたアイテムを、こいつらが拾ってネコババしていた可能性が高い」


「持ち主に返すべき、なのである」

 ゼーゼマンも、返却に賛成のようである。 


「それは、ワタシが落としたモノですわ!」


 ベルガさんは、冒険者に渡すはずだった宝石類を、海賊から逃げる際になくしていた。

 

 それを海賊たちは拾って所持していたのだろう。


「ああ! こんなところに落ちていたなんて! ありがとうございます。こちらは、皆様のためにご用意した報酬です。どうぞ、持っていってくださいませ」


「おお、太っ腹だね、ベルガ!」

 オンコは、遠慮せずに報酬を受け取る。


「こらオンコ、仮にもお姫様だろ? 少しは加減したらどうなんだ?」

 呆れ果てた様子で、エィハスがオンコを説教した。


「いいじゃん。お宝は多い方がいいって、そうでしょ、チサッチ?」


「一理ある」

 自分では受け取ろうとしない割りに、チサちゃんは寛大だった。



 ボクたちパーティを除いて、他の冒険者たちは報酬をもらうと引き上げていった。

 船も限界な上に、これ以上は関わる必要がないからだ。


「また何かあったら、ギルドに連絡する」


 ギルドの派遣した冒険者たちを、チサちゃんは手を振って見送る。


「あの。もしよろしければ、街でもお渡しできますのよ。お気に召さないのでありましたら……」

 どうもベルガさんは、チサちゃんが宝珠を気に入ってないと誤解しているらしい。


「報酬はいい。それよりヌシに会いたい」


 チサちゃんは、元々こういった性格だ。

 モノより体験主義なのである。



 チサちゃんの用事は、まだ終わっていない。

 海賊を追い払ったのは、ヌシに会うためである。


「LOを倒したから、これでこの海はチサちゃんのものだね」


「まだ」と、チサちゃんは首を振った。


「他にも、強いLOがいるってこと?」 




「ここからが、本当の闘い」




 そんな。またチサちゃんが戦わないといけないなんて。



「おそらく、このLOをけしかけた相手が、二層のボス」



 ボクたちの闘いは、ここからが本番らしい。

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