幽霊船のLO、ギシアン!

 その船は、クジラの骨でできていた。


「アレが、何隻も海賊船を生み出しているのです」


 ベルガ産の言葉通り、大型船の脇腹が開き、小型の海賊船が発進している。


「幽霊船。敵の親玉はアンデッド!」


 船長ではなく、船そのものが敵だ。


「オレ様はLO、ギガント・ゴーストシップ・アンデッド、人呼んで『ギシアン』! テメエら一人残らず、海に沈めてやるぜぇ!」


 ボクたちに向かって、砲撃が降り注ぐ。


「わあわあ!」

 オンコまで、バランスを崩しそうになった。どうにか持ち直し、エィハスと共に群がる海賊を蹴散らしていく。


 それでも、形勢は逆転されていた。


「おのれ化物!」

 ゼーゼマンが、炎の竜巻を起こす。


 だが、朱い竜巻は霧によって消化されてしまう。


「ならば!」

 今度は雷を振らせた。


 空から降り注ぐ光の槍も、幽霊船に届く前に霧散する。


「ぐぬぅ、面妖なマネを。妖怪変化め!」

 杖を握り直すも、ゼーゼマンは手を出せないでいた。


「げはは! オレ様に魔法攻撃は届かねえ!」



 反撃の砲弾が、ボクたちの船に襲いかかる。



 チサちゃんが魔法で障壁を張って、砲撃を防ぐ。

 だが、海は爆風でますます荒れ始めた。



「降参しな、人間共! オレ様が人魚の街を襲うまで、黙ってみているんだな! そうすれば、殺すのは最後にしてやるぜ!」


 どのみち、ボクたちを生きて返す気はないらしい。



 何か手を打たないと。





「あんな大きな船、どうやって攻撃を通すの?」




「外がダメなら、内側から攻撃する!」



 チサちゃんの理論は実に単純であり、的確だ。でもまさかね。


「魔王サマが仰るとおり、あのLOを倒すには、中に入る必要があります」


 そうなの!? もう、ツッコミが追いつかないよ!


「外部からの攻撃は一切通用しません。すべて空間を突き抜けてしまうのです」


 しかし、本体は海の底にいるという。


「我々人魚族なら、ご案内できましょう」


 だけど、人魚は本来争いを好まず、闘いになれていない。戦闘はもっぱら、冒険者任せだったという。それで、ずっと海賊に舐められっぱなしなんだとか。


「敵の体内に乗り込む必要があるよ。大丈夫?」


「ダイキがいるから、平気」

 ここに来ても、チサちゃんはボクを信頼してくれている。


「行ってきます。冒険者のみんなは、なんとか持ちこたえて!」

「信じてるぞダイキ! ここは任せろ」


 ボクに襲いかかってきた海賊を、エィハスの剣が切り裂く。


「ブチかましてきな、ダイキチ!」

 華麗な空中殺法で、オンコは海賊を海へと落とす。


「帰ってきたら、共にギャルをはべらそうぞ。ダイキ殿!」

 カマイタチを舞い上がらせ、ぜーゼマンは海賊船の帆をへし折っていった。


 ボクはチサちゃんだけいればいいよ……。

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