海賊退治に出撃!

「海賊騒動ね。我がズースミックでも依頼は聞いているよ。ぶっ飛ばしてきてよ」


 ギルドに話を付け、海賊討伐隊が結成された。


 ボクたちも、エィハスたちに連絡を取る。


 駆けつけたエィハスたちは、二つ返事で承諾してくれた。


「同じシーフ職としても、人から無理矢理奪うのは倫理に反するよね!」


「海を荒らされると、海産物も採れないしな」

 オンコとエィハスは、まっとうな理由で協力してくれる。


「水着ギャルの独り占めは、断固として許されないのである」

 一方、ゼーゼマンの動機は不純極まりない。連れてきてよかったのかなぁ。




 ボクたちは、ギルドが用意した船に乗り込む。




 楽しげに、チサちゃんが木製の床を踏みならす。憧れの船に乗れたのがうれしいのだろう。



「では、ベルガさんは道案内をよろしくお願いします」


「ご案内しますわ。こちらへ」

 真っ先に、ベルガさんは海の中へ。海面に顔を出す。


 ボクとチサちゃんの乗る船も続いた。


「魔法をしかけますわ」


 ボクたちの船は、誰も舵を握っていない。ベルガさんが、魔法で舵を取ってくれる。


「ふわああ」


 船の先頭に立ち、チサちゃんが潮風を受け止めていた。まるで船首像のようだ。


 大昔に大ヒットした映画だと、後ろから抱きしめてあげるんだろうけど。その映画の船は沈んじゃうんだよね。縁起が悪いからやめておこう。


「水平線以外、何もない」

「キレイだね」


 ボクたちが話していると、ベルガさんが海の向こうを指さす。


「あそこに見える大きなホタテ貝が、ビントバーの街です。海賊の攻撃を受けて、今はシェルターとなっています」


 島状のホタテ貝を、何隻もの海賊船が取り囲んでいた。


「ベルガさんは船に上がっててください。ボクたちがやっつけますので」

「お願いします」


 先陣を切って、オンコが船を横付けするように指示を出す。


 海賊船団の陣形が乱れた。


「今だよ、ゼーゼマン。帆を凍らせて!」

「承知」


 ゼーゼマンが杖を振って、敵船の帆に氷魔法を放つ。


 身動きが取れなくなった海賊船に、ボクたちは乗り込んだ。乱闘が始まる。


 チサちゃんは、応戦してくる他の船を、火球で燃やす。


「ダイキ、ジャンプ!」

「よしきた」


 ボクが海賊船団に飛び乗っては、チサちゃんが魔法を撃って沈めていく。


 攻撃されそうになったら、ボクはスコップ型の偃月刀を振り回して、相手を海へたたき落とした。


「チサッチ、船がワラワラ来るよ!」

「キリがないのである」


 結構な数を減らしたと思ったが、海賊船は続々とやってくる。


「親玉を潰さないと!」

 エィハスが、敵のボスがどれかを見分けようとしていた。


 中央にいる巨大な船から、砲弾が振ってくる。


 エィハスは、砲撃の一発を剣で切り裂いた。


 しかし、残りの二発は海へ落ちて、荒波を起こして船を揺らす。


「うお!」

 海へ落ちそうになったエィハスの腕を、オンコが掴んだ。


「すまん」

「いいって。それより」


 霧に包まれていた大型船が、全貌を現す。


「なんだあれ?」

「あれは、幽霊船である!」

 ゼーゼマンが、幽霊船に向けて杖を突き立てた。

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