日焼け

 お風呂の湯船に浸かると、チサちゃんが軽く悲鳴を上げた。


「どうしたの、チサちゃん?」

「背中と足が、なんか痛い。ダイキ見て」


 チサちゃんの背中に白い横のラインができている。

 他は小麦色に焼けていた。

 足も色が変わってしまっている。


「あー、日に焼けちゃったのか」


 今日はぬるめのシャワーだけで済ます。

 ここで無理をすると、肌が荒れてしまう。


 その後、冷やしたタオルで患部を優しく包んだ。


「これでよし、と」

「ありがと、ダイキ。物知り」

「いやいや。ママさんになった友だちから聞いたことを、マネしてみただけだよ」


 チサちゃんにはキレイでいて欲しい。


「そのうち、皮がむけるようになるよ」

「わたし、爬虫類じゃない」

「脱皮とは違うよ。気持ち悪いからって無理して剥がすと、お肌に悪いからね」

「分かった。ガマンする」

「じゃあ、出ようか」


 眠る前に、チサちゃんは何かノートを広げて、クレヨンで絵を描いていた。


「何をしてるの?」

「絵日記」


 ネウロータくんのお家に遊びに行った様子や、海で遊んだことを、書いているようだ。


 ボク、ネウロータくんと戦ったときは、グッタリしてすぐに寝ちゃっただよね。こんなの描いていたんだ。知らなかったな。


 イラストが本格的である。クレヨンだけで表現したとは思えない。


「すごいね。ボク、絵が苦手だったよ。マンガのキャラクターもろくに描けないよ」

「こういうのはマインド。わたしだって得意じゃない」


 チサちゃんが謙遜する。


「コレも課題?」

「自由課題。別に義務じゃない。思い出に残しているだけ」


 クレヨンを走らせるチサちゃんの様子は、実に楽しげだった。


 ボクは毎回、チサちゃんに驚かされる。


 子どもっぽい一面もありつつ、大人びた発言を、チサちゃんはしてくるのだ。子ども目線でありながら、世界を大局的に見ている節がある。かと思えば、無邪気に絵日記なんて書いちゃって。


 今だと、スマホでパシャっとすれば済んでしまう。プリントアウトして貼り付けた方が楽鴨知れない。


 セイさんが持っているから、ここにもスマホや携帯端末らしきモノはある。魔王さえあれば何でもできるはずだ。


 けど、チサちゃんはアナログにこだわっている。時代に逆らっているわけじゃない。モノを大事にしているだけだ。


 チサちゃんは、自分の目で見て確かめたモノを書き記している。


 その姿はボクに、世界を背負うリーダーの器を思わせた。

 チサちゃんは、きっといい魔王になる。



 ボクは、チサちゃんの玉座になれて、幸せだ。

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