友だちになろう

「はあ?」

 ネウロータくんが眉間に皺を寄せた。



「家来なら、セイで事足りている。それより、もっとお友だちが欲しい。衝突するより、お互いに助け合える方が色々とお得。何より、ケンカするより楽しい」


 自身の理想を、チサちゃんは楽しげに語る。


 呆れた顔にながらネウロータくんはため息をつく。



「お前の魔王、変わってるな」



「チサちゃんは、こういう子なんだよ」

 

 誰とも争う気なんてない、優しい子なのだ。





 考え込むような姿勢を、ネウロータくんは取る。




「うーん。やだ!」

「どうして?」

「だって、ボクたち敵同士だぞ! ボクが出し抜くとか、考えないのかよ!?」

「出し抜かれるヤツが悪い」


 こういうとき、チサちゃんは異様なまでにドライだ。

 ずっと一緒にいるボクも、チサちゃんがストイックなのか天然なのか、分からないときがある。


 一つ分かるのは、チサちゃんがネウロータくんを信頼していると言うことだけ。


「チサ様の言うことも、一理あると思います」

 ひと言添えたのは、トシコさんだ。


「トシコさんまで、こいつらの肩を持つの!?」


「まあ聞いてよ。ダイキさん、私たちの世界って、インターネットってあるじゃない。そこって薄い関係性と、どす黒い悪意が同居しているわよね?」


 ボクも、トシコさんの考えにうなずく。



「悪意のある場所って、いつしか誰も来なくなって、流れがせき止められて淀んでいくわ。それこそ、ふこるツボで集められた蠱毒みたいに。だから、いがみ合うより助け合うという選択肢も悪くないと思うんだけど?」


「そこまでヒドいんですか? 魔王どうしの争いって」


「例えばの話よ。そうならないために、今のうちに手を打っておきましょ、ってこと」


「ネウロータくんは、悪意に染まらないよ」


 ボクは、きっぱりと言い切った。


「どうしてそう言える?」


「だって、本気でボクたちを潰すつもりなら、テレビゲームでガツンとやっつければよかった。それをしなかった」


 ぐぬぬ、とネウロータくんは唸る。

 

「ちっ、勝手にしろ!」



 ネウロータくんは、トシコさんの膝で眠ってしまう。




「というわけなので、お見送りできませんが」

 トシコさんが、苦笑いを浮かべた。



「いえいえお構いなく。ありがとうございました。美味しかったです」

「今日に限らず、またいらして。おいしいお料理を、お待ちしていますわ」





 ボクたちは、ネウロータくんの宮殿を後にする。



 ようやく、ボクたちは海のカードを手に入れた。



 とはいえ、これで勝ったわけではない。

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