二層行き、前祝い
「おめでとうございます、チサ様、ダイキ様。みなさんなら、やれると思っておりました」
元の世界に戻ると、セイさんが豪華な料理を作って待っていた。
「あれ、海鮮料理ばっかりだ」
並んでいるのは、エビチリやお刺身など、海で採れる食材が多い。
「ネウロータが……様が、ねぎらいだと言って前もって贈って下さったのです」
うわあ、本当にいい子じゃないか。感謝しないと。
「って、あれ?」
さっきセイさん、ネウロータくんを呼び捨てにしかけていなかったかな?
「ありがと、セイ」
「今日はお祝いです。思い切り召し上がって下さい」
話しかけたかったけど、お風呂を優先した。
チサちゃんをキレイにしないとね。
軽くお風呂を済ませ、ボクはあぐらをかく。
いつものように、チサちゃんを間に載せる。
「いただきます」
海鮮メインの料理は、あっという間になくなる。
チサちゃんと一緒に、寝間着に着替えた。
「これでようやく、本格的な二層攻略がスタートしますね」
「はい、ダイキ様。明日の朝には、海ができあがっているでしょう」
城の南側に、海のある大陸が発生予定らしい。
イベントをこなして、新しいフィールドが実装される世界なんて、相変わらずゲームっぽいなぁ。
「水着を選ばないと」
チサちゃんも、ウキウキしていると伝わってくる。
「ですが、ご用心を。よからぬウワサを耳にしましたので」
「そうなんですか?」
「はい。聞くところによると、海に恐ろしいモンスターが実装されたとか」
海中の深くに、新しいLOが誕生したという。
恐ろしく強くて、誰も勝ったことがないらしい。
「それまで、二層のボスは大して強くはなかったんです。あくまでも、イキり始めた魔王の鼻っ柱を折る程度の、初心者殺しレベルだったのですが」
「また、亜神さんの妨害でしょうか?」
なにかとボクたちを目の敵にして、難題をふっかけてくる。
「それがですね、どうも別口らしく」
亜神さんと違う勢力が? どこの誰だろう?
「何も、ダイキ様だけを狙った様子はありません」
全ての魔王に対して、強烈な敵意を向けているのだとか。
「いまだ、正体は掴めていません。ダイキ様、くれぐれも油断せぬよう」
「忠告、ありがとうございます」
改めて身が引き締まる思いになった。
「始まる前からクヨクヨしても仕方ない。明日は目一杯楽しむ。攻略はそれから」
「そうだね。明日は遊ぼう」
「二層攻略の道のりは長い。各地を回りつつ、情報を集める」
気長にやっていこう。
「明日はエィハスたちも呼ぶ。きっと楽しんでくれる」
なんだか、面白くなってきたぞ。
「だから、今日は早く寝る」
「分かった。そろそろおやすみしようか」
明日に備え、ボクたちは早い時間に床へついた。
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