第三章 いよいよ海へ。人魚姫との遭遇!?

ズースミックの街

 セイさんの言うとおり、南側に港町ができあがっている。


 馬車で移動すると、最初に潮風が出迎えてくれた。


「ふおお、海」

 チサちゃんがため息をつく。


 一面青い世界が、ボクたちの視界に広がった。


 ネウロータくんの世界とは、微妙に違う。

 

 向こうは海外っぽかったけど、ボクたちの世界は日本らしさが多少ある。


「ここが、新しい都市か」


 もう都市ができあがっている。

 まるで、昔からあった街みたいに。


 チサちゃんと手を繋ぎ、街の方へ。


「もし、わたしの世界で港があったら、という想像の元、この街はできあがった」


 街を歩きながら、チサちゃんが説明してくれた。


 一から街を建造すると、時間が掛かりすぎる。

 それはそれで楽しいんだけど。


「建築は手早く行う。わたしたち魔王は発展だけ気にしていればいい」

「良心的なシステムだね」

「初期の港町は、水着を作るところから始めないといけなかったらしい」


 セイさんから聞いた話だという。



 そう考えると、いい時代になったなと思った。



「何をして遊ぼうか?」


 今はまだ朝の七時である。太陽が出て間もない。

 遊ぶには早すぎる。

 

 朝ご飯もやけに早かった。そんなに楽しみだったのかな。


「今日は遊ばない。先にエィハスとの用事を済ませる」



 最初の冒険で知り合った、女戦士のエィハスが、ボクたちに用事があるらしい。





 街の入り口に。ここは、「ズースミック」の街と言うらしい。



「エィハスとは、どこかで待ち合わせているの?」

「市場の入り口。先に食材を運ぶ」


 チサちゃんに連れられて、魚の香り漂う市場へ。


「おーいチサっち、ダイキチ、こっち」

 飛び上がりながら大きく手を振っているのは、ドワーフのオンコである。シーフでありながら、お姫様という変わった経歴の持ち主だ。


 オンコは最近、ボクを「ダイキチ」と呼ぶ。


「久しいな、ダイキ、チサ。ここが二層か」

 女戦士エィハスは。市場を占める食材の方に興味がありそう。



「母と食材を見に来たついでに、遊んでこいと言われた」



 エィハスの母親は、飲食店を経営している。

 今日は、街へ運び込む食材を選んでいるところらしい。



 これだけ大量の魚があれば、すばらしい料理ができるだろう。


「ゼーゼマンも付き添い?」



「うむ」

 黒一点の魔道士ゼーゼマンは、街行く女性たちを観察していた。色ボケなところは相変わらずだ。


「ゼーゼマンに氷を作ってもらって、ルセランドまで運ぶ」


 エィハスの料理屋がある場所が、ルセランドだ。


 ゼーゼマンが、木箱の中に砕いた氷を詰める。

 そこに、エィハスが魚介を置いた。その木箱を馬車へ積む。

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