王たちの事情

「運ぶのを手伝おう」

 ボクたちも、馬車に魚介を乗せていく。


 チサちゃんの方は、ゼーゼマンと氷を作る。


 あ、フカヒレだ。

 ゾッとするくらい高かったけど、大丈夫なのかな?


「悪いな、ダイキ」 

「すべてはおいしいゴハンのためさ」


 食材はエィハスの母親が選ぶ。ボクたちは、荷を馬車に乗せるまででいいらしい。


「ありがとうダイキ。あとはこちらでやる」


 大量の積み荷を乗せた馬車に、エィハスも乗り込む。


「キツいね。これ、毎日するの?」


「買い込むのは、今日だけだ。一通り料理を作って評判を見て、明日からは食材を吟味するつもりだ」


 一時間かけて、なんとか馬車に荷を積み終えた。


 さらにエィハスたちは、護衛も行うという。往復で数時間の距離だ。


「何かあったら、また声をかけて」

「ああ。昼過ぎにまたこの街に寄る。それまでチサとデートを楽しんでくれ」



 チサちゃんが、ボクの手を握った、ボクも、握り返す。



「街を回って待ってて。昼から水着売り場に行こっか?」


「承知。いってらっしゃい」

 オンコに、チサちゃんが手を振った。



 エィハスたちを乗せた馬車が、通り過ぎていく。


 馬車を見送った後、街を探検した。


 ズースミックの冒険者ギルドに挨拶をし、ギルドカードを見せる。そこの受付にも、ボクのカード内容に驚かれた。


「レベルカンストなんて、聞いたことないよ」

 水兵の格好をした受付の男性が、大げさに肩をすくめる。


「随分と、強力なLOとばかり戦ってきたんだね? 魔王の玉座って、もっと自分のお城でふんぞり返っているもんだとばかり思っていたよ」


「玉座が冒険に出るのって、そんなに珍しいのですか?」



「あまり聞かないね。よその世界を支配しているネウロータって魔王は、めったに外なんか出ないんだってさ」



 国王からの依頼でもなければ、ダンジョン探索もしないという。

 ただし、他の魔王に攻め込まれる時間が多いからなんだって。


 どうりで、メチャクチャ強そうなわけだ。

 魔王退治の実戦に乏しいボクは、トシコさんに勝てるだろうか。




 考えるのはよそう。人は人、ウチはウチだ。




「ダイキには、ダイキの良さがある。ダイキは街の人も気に掛けている。そこはすごい」


「ありがとう。チサちゃんにそう言ってもらえると、ボクも玉座をやっていてよかった、って思えるよ」


 ボクたちが去ろうとすると、受付のお兄さんが言葉を付け加えた。

「そうそう。レベルが上がってるから、確認するといいよ」



 お兄さんに言われて、ギルドカードを確かめる。




「うん。レベルアップしてる。一二〇だって」

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