水着回
「遅かったのである」
広い砂浜に、ゼーゼマンがパラソルを差している。砂に腰を掛け、魔導書らしき書物を読んでいた。
目の前に並べているのは、海藻類だ。
「お主たちが水着を選んでいる間に、海藻を用いたポーションが作れそうなくらい待ったである」
「ごめんってゼーゼマン。お昼はご馳走するよ」
「それくらいの恩恵がなければ、釣り合わないのである」
ゼーゼマンも、ガマンの限界を迎えていた。
それもそうだ。水着ギャルがほとんどいないのだから。
海はまだ、シーズンではないらしい。人もまばらである。家族連れがわずかしかいなかった。まだ、海開きには早かったみたい。
砂浜の端に、海の家がある。売っているモノは、地球とたいして変わらない。浮き輪とかが空気を入れるタイプじゃないくらいかな。
そこの更衣室へ、チサちゃんたちは向かった。
ボクも海の家で水着を買い、カンタンに着替えを済ませる。
「ダイキチ、チサッチが水着に着替えるまで、もうちょい待ってて」
「うん、オンコ。ボクは先に出てるね」
ボクは着ぐるみから海パンへと、秒で着替えを済ませた。
今ボクは、チサちゃんとは壁一枚隔てているのみ。その時間すらもどかしかった。緊張というより、心配が勝つ。
「お待たせ」
数分後、チサちゃんが目の前に。薄紫のワンピースという姿で。
「素敵だよ、チサちゃん」
ボクはため息を漏らす。
「一番気に入っているのは、後ろ」
言うと、チサちゃんがボクに背を向けた。
「すごいね、チサちゃんの格好」
後ろを向くと、背中はヒモだけで支えている。なんとも危なっかしい。前だけ見ていると、フリフリのワンピースだが、後ろからはヒモビキニかと見間違う作りだ。
着ているチサちゃんの方は、振り返ってドヤ顔を決めている。
「それ、『モノキニ』って言うんだってさ。店員さんが言うにはさ」
続いて、オンコが海岸にやってきた。
タンキニの上にデニムのショートパンツという、オンコらしい、ボーイッシュなスタイルである。大きい麦わら帽子が、少女らしさを醸し出す。
「どうしても、ダイキを驚かせたかったんだって」
「いやあ、実際驚いたよ。でも似合ってる」
チサちゃんも、満足げである。それが、ボクには一番うれしかった。
「ダイキとは肌を密着させるから、露出多めがよかった」
ちゃんと考えているんだ。
「少し、冒険しすぎただろうか」
エィハスは、大胆な赤ビキニだ。
「バンドゥ」というリボンを結んだようなタイプのトップスで、胸の中央で生地はねじれている。下はフリル付きだ。
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