水着選びで思い出す、玉座の特性

 オンコたちが戻ってきた。


「先に、お昼ごはん済ませちゃう? あたしら、道中でお茶してきちゃったけど」

「まだいい。わたしたちも、ちょっと食べてた」

「だったら先に、水着を選ぼう。お昼は、海の家で食べよっか」

「賛成!」


 意見が一致したので、移動を開始する。


「あった。水着売り場」


 市場を抜け、水着ショップへ。


「じゃあ、ダイキはゼーゼマンと待ってて。選んでくるから」



 オンコのひと言に、チサちゃんが驚きの顔になる。



「え、ダイキと一緒に見たい」

「そうは言ってもなー」



 ここは、婦人用の水着しか置いていない。

 ボクが入ると、冷ややかな目で見られてしまう。



「いくら魔王でも、独占はちょっと無理かな」

「こればかりは、勘弁願いたい」


 エィハスも加わり、さすがにチサちゃんも引かざるを得なくなった。

「じゃあ、どんなタイプがいいか聞くだけ聞いてみる」

「チサちゃんが好きなモノで。ボクの好みは考えなくていいよ」



 いくらボクが喜ぶ水着でも、チサちゃんの着心地などがある。チサちゃんのセンスも関係するから、そちらを尊重したい。



「分かった。ダイキが気に入らなかったら、また新しいのを買うだけ。それでいい」



 エィハスとオンコが、共にチサちゃんの肩に手を置く。



「まあ、わきまえるさ」

「悪いようにはしないって」



 二人が選んでくれるなら、大丈夫だろう。



「水着を買うつもりはないのである。それより水着ギャルの方に興味津々である」

 ゼーゼマンは、早く海に行きたい様子である。



「いつ見ても、ゼーゼマンは平常運転だね」

「まったくだ。セクハラしてこないだけ、まだマシだが」

「それはそうと、早く入ろうチサっち」


 オンコが、チサちゃんを店内へと押す。


「じゃあ、海水浴場で待っていてくれ」


「我がパラソルを差しておくのである」


 ボクたちは、先に海へ向おうとした。


「あれ?」


 なぜだろう。ボクは水着売り場へ入ってしまう。


「ダイキチ、海に行かないの?」


 オンコが指摘すると、チサちゃんが「あ」と声を出す。




「忘れていた。玉座は……」



 離れられないんだったっけ。



「男性も入店はできるけど、歓迎はされないだろうねー」


「仕方ない。水着は私たちで選ぶから、チサは店の隅で待っていてくれ」


 エィハスが提案すると、チサちゃんは「そうする」と、待つことにした。


「それと、ダイキにはコレを」


 そう言って、エィハスがボクにハチマキを渡す。


 何をするべきかは、すぐに分かった。


 ボクは、ハチマキで目隠しをする。


「これでいいかな?」

「十分だ。買い終わったら、ハチマキを取ろう」

「うん。楽しみにしているよ」


 ボクは店内に設置された木の椅子に座って、チサちゃんを膝に乗せる。


「楽しそうだね、海」

「面白そう」


 水着をチョイスしているらしき二人の声を聴きながら、チサちゃんに声をかけた。


 少し退屈になってきたあたりで、水着選びが終わったらしい。



 ボクは、ハチマキを取った。

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