料理完成!

 小羊ちゃんが実況をすると、ネウロータくんが驚きの声を上げた。


「デザートだって!?」


 驚くのも無理はないかな。

 魚介類って塩気が強いもんね。デザートなんて思いつかない。

 テングサの寒天とかはあるけど、少し時間が掛かる。


 ボクたちの方は、エビグラタンにとりかかった。

 また薄力粉の出番だ。

 マカロニとタマネギ、エビをしっかりと炒める。ホワイトソースをからめてオーブンへ。 


 一方、トシコさんの方はアジの身をまな板の上で切り刻む。隣では、お味噌汁に海藻が入っている。


 切り身は、味噌とネギを合わせているから、「なめろう」かな? 違う。焼いていた。


「ハンバーグ?」

「さんが焼きっていうんだよ、チサちゃん」


 山で暮らす人にも魚を食べてもらう、という知恵から生まれた料理だ。あんなの絶対美味しいよ。


「ダイキ、よそ見してると」

「あっ」


 ボクは、鼻の先に薄力粉が付いてしまった。


「カニコロッケを作る前に、自分に衣が付いちゃった」

「ふふっ」


 同じように、鼻に粉をつけて、チサちゃんが笑顔になる。

 ボクも、つられて笑った。


 フライヤーにスイッチを入れる。業務用のフライヤーなんて初めて使うが、大丈夫かな。


「油の温度は大丈夫?」


 チサちゃんに聞くと、「OK」と返ってくる。


「じゃあ、揚げるよ」

「投下」


 コロッケを、崩さないように油の中へ。パリパリと、いい音がする。


 その間に、付け合わせのキャベツを刻む。チサちゃんが、怒濤の勢いで、キャベツをひと玉切り終えている。つまみ食いしそうだな。


「ねえねえ、何してるの?」

 コロッケを揚げる音が気になったのか、子どもたちが近づいてきた。フライヤーと子どもたちとの間には、透明な仕切り板が間にある。だから、子どもたちに向かって油は跳ねない。

「コロッケを揚げている。危ないから下がってて」

 チサちゃんが注意をすると、子どもたちから「はーい」と元気な声が返ってきた。

「もうすぐできるから、がまんして」

「はーい」

 こんがりきつね色になったコロッケを、フライヤーから揚げる。

 ごはんが炊き上がった。

「ダイキ、仰いで」

 ボクは団扇で、ホカホカのごはんを扇ぐ。ほどよい温度になったあたりで、チサちゃんが三角に握る。

「ダイキも手伝って」

 ボクも加勢し、人数分のおにぎりを作っていった。

 大皿に、炊き込みごはんのおにぎりを並べていく。


「かんせーい」


「こっちも完成だ!」


 チサちゃんとネウロータくんが、料理完了の合図をマミちゃんに送る。


 同時に、終了のゴングが鳴った。

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