第二章 おねショタ魔王と激突する。
転送準備、開始
翌朝の朝食後、転送の儀式は即座に執り行われた。
まずは、メイドさんたちが玄関前を片付ける。
マミちゃんに座標を教わったチサちゃんが、玄関前にフロア一面分ある紙を用意した。クレヨンでゴリゴリと魔方陣を描く。
いよいよ、ネウロータという魔王がいるフィールドを目指すのだ。
チサちゃんは、玄関の前に魔方陣を修正しつつ、冒険の準備を行う。
ボクは、相手魔王さんのお土産に渡すポージュースを持たされた。セイさんの焼いた、カボチャのクッキーも。
「向こうの人たち、喜んでくれるかな?」
確かに、ポージュースは自信作だ。けれど、土地が違えば舌も変わってくる。お気に召さない可能性だって。
「きっと大丈夫。ダイキの力で育てたポージュースを、信じて」
不安がるボクの手に、チサちゃんが手を添えてくれる。
「ありがとう、チサちゃん」
ボクも、握り返す。
「礼をいうのは、こっち」
さらに、チサちゃんは手を重ねてきた。
「ここに来てくれて、本当に感謝してる。ありがとダイキ」
チサちゃんが、ボクを抱きしめる。
「ではチサ様。転送準備が整いました」
セイさんが魔方陣の仕上げに取りかかった。他のメイドさんも、せわしなく魔方陣のズレを整える。
「あの、セイさん、質問が」
「なんなりと」
「セイさんって、最強の玉座候補だったんですよね?」
「はい。周りはそう申しております。でも、昔の話です。ワタクシの力が、魔王に通用していたなんて」
時代が変わって、魔王のレベルも代替わりしているらしい。セイさんが活躍していた当時より、今の魔王が強い可能性だってあるんだ。
「そう……ですよね」
「悲観なさる必要はございませんよ、ダイキ様」
落ち込むボクに、セイさんは「フフッ」と微笑みを返してくれる。
「自画自賛するわけではありませんが、その伝説的存在を打ち破ったのがあなただということを、お忘れなく」
そうだった。ボクは、セイさんに勝ったんだ。忘れていたな。あれを勝ったと言っていいのか分からないけど。
「ではチサ様ダイキ様、お気を付けて」
魔方陣が発動した。
セイさんに見送られながら、ボクらは魔方陣に足を踏み入れる。
魔方陣が、ピンク色の光を放った。光は柱となって、ボクたちを包み込む。
「チサちゃん!」
何が起きても大丈夫なように、ボクはチサちゃんを抱きしめる。
「問題ございませんダイキ様。どうか慌てずに」
セイさんが、ボクに声をかけてくれた。
「ダイキ、怖いなら手を繋ぐ」
チサちゃんも、ボクの手を握りしめる。
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