うわきだめ、ぜったい
「あ、ごめんなさい! あたしたちの話ばかり! ネウロータだったわね?」
「いいよ。それどころじゃないみたいだし。今日はありがとう。マミちゃん、ケイスさんも」
「こちらこそ! なんか自慢話に来ただけね! ごめんなさい!」
そこまで気を使えるなんて。さすが王者の器だ。
「とんでもない。俄然やる気が出たよ」
ボクたちも、海で何を始めるかイメージが湧いてきそうである。
「そう言ってくれると、こちらも話した甲斐があったわ!」
「ロクなアドバイスはございませんが、お役に立てれば」
伏せの状態から、ケイスさんが四つ足で立ち上がった。
「とにかく気をつけなさい! じゃあねー!」
「では、お先に三層でお待ちしております。それでは」
マミちゃんとケイスさんが帰宅する。
「すごいね。ボク以外にも、人間の玉座だって」
チサちゃんは、ボーッとしていた。
「あれ、チサちゃん?」
「マグロ解体ショー。見てみたい」
完全に、うわの空である。
チサちゃんは、二層への憧れで頭が一杯になっているようだ。
「浮かれてるね、チサちゃん」
「はっ。そうだった。ダイキのピンチなのに」
「ボクの危機はいいよ。それより、二層に近い魔王は強いらしいよ。頑張ろう。ボクがフォローするから」
「大丈夫。ダイキがいるから百人力」
自信満々で、チサちゃんは力こぶを作った。
ボクも気を引き締めないと。
「女の子の玉座か、どんな相手だろう?」
「気になる?」
チサちゃんが、わずかに頬を膨らませた。
「待って待って。別に会いたいってワケじゃないから。珍しいなーと」
魔王と戦って結構な月日が流れたけど、男性魔王と女性玉座の組み合わせとの対面がない。てっきり、魔王は女性ばかりだと思っていた。ちゃんと、男子の魔王もいたんだね。
「うわきはだめ。ぜったい」
「もちろん! ボクにはチサちゃんだけだよ」
ボクが言うと、チサちゃんの顔が一気に熱くなる。
「ホント?」
「ホントにホント」
だって、チサちゃんのおかげで、ボクは第二の人生を歩んでいるから。
リストラされたボクは、明日どうやって生きようか悩んでいた。ヤケになって、世の中の全部がキライになりかけていた。
そんなとき、チサちゃんに出会ったんだ。
もし、チサちゃんと会えなければ、今のボクはない。
エィハスたちにも会えず、マミちゃんやケイスさんとも友人になれなかっただろう。
彼女たちを引き合わせてくれたのは、他ならぬチサちゃんだ。
今度は、ボクがチサちゃんに恩を返す番だと、毎日思っている。
具体的な案は、なにもないけど。
「ダイキ。これからもいっしょ」
「そうだよ。ボクたちは一緒だ」
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