新しい階層へ

「ダイキは、海を手に入れたい?」

「手に入るなら、そうだねー」


 これまで戦ってきた魔王軍は、海を手に入れてなかった。

 マミちゃんですら、持っていないらしい。


「ダイキは、新しいエリアが開放されても、うれしくない?」

 チサちゃんが、さみしげな表情を浮かべた。


「ああ、ごめん。そういうわけじゃなくてさ」

 ボクは詫びて、意見を訂正する。


「なにも、チサちゃんの都市開発に反対なわけじゃない。その分さ、チサちゃんが危ない目に遭うのが怖いんだ」


 新しいエリアを手にしようと思えば、他の魔王とも戦わなければならない。魔王だって、もっと強くなる。


 ボクは、そっちが心配だ。


「チサちゃんは、怖くないの?」

「うん。怖い。けど、結局いつかは乗り越えなくちゃいけない」


 チサちゃんの決意はホンモノだ。


 かといって、大ケガをさせたくないし。


 

 どうにか、穏便に済ませられないかな。



「そうもいかないのです。ダイキ様」



「うわっ、セイさん」



 ボクたちの前に、チサちゃんの秘書であるセイさんが現れた。

 

 出てくるのはいいけど、ボクの心の中を読まないで欲しいなぁ。


「実は、緊急事態でして」

 セイさんも、ボクに紙をよこしてくる。



 魔界ってメールが発達していないんだね。全部紙なんだよな。




「二層進出……」




 ボクがそう愚痴っている中、チサちゃんは紙を握りしめる。




「チサちゃん、二層ってなに?」



「ご説明致します。ダイキ様」


 セイさんが言うには、この世界には、幾階もの階層があるらしい。

 いわゆるランクといおうか、ゲームで言うと「一面、二面」といったステージが用意されている。


 自分たちの拠点を維持して充実させることが第一関門である。そこから更に、別の世界へ飛び出すのが第二関門らしい。


「階層って、どれくらいあるんです?」


「今のところ、全部で七階層と言われています。その全てにある条件を満たした者だけが、大魔王を継げる、と言われています」


 各階層に行くためには、条件が必要だ。 各階層に行くためには、条件が必要だ。今のエリアを維持することが二層に行く条件だったらしい。


「二層進出、おめでとうございます、チサ様」


「ありがとう、セイ、ダイキも」


 セイさんの祝福に、チサちゃんが喜ぶ。



「次の階層に行けなかったら、ボクたちどうなっていたの?」




「……LOになる」


 LOとは、Lost Ownershipの略で、「魔王のなり損ない」となったモンスターだ。


「これまで倒したLOは、一層にある地震の領土の維持もできなかった。おそらく、対立はこれまで以上に激化する」


 どうやらボクたちは、海を手に入れないとモンスターにまで墜ちてしまうらしい。


「中には、以前の戦いで他の階層から脱落し、ずっと低層に居座り続けているモンスターもいます。ダイキ様が戦ったLOは、トップクラスばかりでして」


 ボクって、くじ運が悪いのかなぁ。


「第三層へ行く条件は、海のカードを手に入れること」

「よしっ、海を持っている魔王と戦ってみよう」

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