第93話 セイの処罰!?
聞けば、あの一撃は世界すら滅ぼすほどの力があったらしい。
現に、数カ所の世界を消し炭にしたこともあったとか。
壊したのは、邪悪なモンスターだらけの世界ばかりだったというけど。
「なんでや!」
最強のL・Oが負けると思っていなかったのか、亜神が悔しがる。
「いえ、亜神様。我々の負けですわ」
「待たんかセイ! もっと頑張ろっ!」
往生際が悪い。亜神は尚も食い下がる。
「これ以上戦うにも、マナは尽きております。勝負は見えました」
「あーん」
目に見えて亜神はションボリした。
「あ、そっか」
ボクはセイさんの言葉が何を意味しているのか、ようやく理解する。
――自分たちの攻撃を受けきったら勝ち。
つまり、ボクたちが攻撃しなくても勝てる段取りを組んでくれたのだ。
「さすがセイさんですね。チサちゃんの消極的な性格を把握し、勝負できる方法を考えつくなんて」
「あ、いえ。本気で魔王の座を狙いにいったんですけど」
セイさんの言葉が、妙に歯切れが悪い。
あれ? ボク、なんか間違えたこと言ったかな?
「ぐぬぬ。では仕方ない。チサ・ス・ギルの勝利をもって、今回の授業参観を終了する」
不満げながらも、亜神が戦闘の終了を宣言した。
これで、誰もチサちゃんの勝ちに異議を唱える者はいまい。
「では、セイ・ショガク。あなたへの処遇を言い渡します」
「なんなりと」
どういう処罰が来てもいいように、セイさんは準備をしている。
「セイさん、本当にこれでいいんでしょうか?」
口出しをする資格なんて、ボクにはない。ただ、見守るしかなかった。
「仕方ありません。わたくしは、ロイリ・ス・ギル様の考えに従うまで。抗えば、謀反とみなされ、チサ様にも危害が及ぶかと。では、お世話になりました。ドレンを頼みます」
この世界から追い出されるのは、どうにもならないのか。
「あの、ちょっと待ってもらえませんか?」
ロイリさんとセイさんの間に、ボクは割って入った。
「なんでしょう。部外者が口を出すことは許されません」
「部外者じゃありません。ボクは、ボクたちはセイさんの家族です」
ボクはきっぱりと言う。
「ドレンだって、そう思っています。ボクたちは、ちょっとの間しか一緒にいなかったけど、家族も同然です。反乱したのだって、そこの亜神さんがけしかけたんでしょ?」
「そうですね」
自分で言っておいて暴論だと思ったが、ロイリさんはボクの意見に同意した。
「だったら、セイさんの意志じゃないのに、追い出すのはおかしいと」
「ならば、チサにも聞いてみましょうか。チサは、どう思っているのです?」
ロイリさんは、チサちゃんに問う。
「セイは家族。誰にも連れて行かせない。もし、連れて行くというなら、この世界全てをもって、妨害する」
チサちゃんは、やると言ったらやる。
それだけの絆は、二人の間にはあるんだ。
そう簡単に切り離せるモノか。
「なるほど、分かりました。では改めて、セイに罰を与えます」
そんな! ボクたちの説得は聞いてもらえないのか?
「セイ、あなたへの処罰は、魔界からの追放です」
「えっ?」
呆気にとられた様子で、セイさんが聞き返す。
「ですから、魔界から追放します。チサが立派になるまで、あなたは魔界の地を踏んではなりません。いいですね?」
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