第94話 大魔王、夫に説教する
「しょ、承知いたしました」
セイさんが、城の中へ入っていった。
「それじゃ、セイさんは?」
「いつも通りに働いてもらいます。もうL・Oとして活動もしないでしょう。彼女が魔王の座を狙う心配はありません。魔界はそう判断し、チサの永久秘書を担当してもらいます」
「セイさんは、追い出されずに済むんですね?」
「何をおっしゃいます。始めから、セイをここから追放なんて考えてませんわ」
そうか、ボクたちはまんまとドッキリに引っかかったワケだ。
「やった!」
チサちゃんが大喜びした。
「これからもずっと、セイさんと一緒だね」
「うん。うれしい」
喜んでるな、チサちゃん。
「手ぬるい!」
唯一、納得いかないご様子の方が。亜神だ。
「我々魔族は、ニンゲンに負けるわけにはイカンのだ! こうなったら、新たに凶悪なL・Oを呼びつけてやる。力押しでダイキを倒し、チサを守るのだ。そうだそれがいい。こうなったら、我自らが」
「いい加減になさい!」
呆れた様子で、ロイリさんが亜神をたしなめる。
「大人げないですわ、亜神。もう勝負はつきました。あなたのいう邪悪なL・Oを呼んだとしても、同じこと。いいえ、圧勝しますわ。今度は二人とも、自分たちの世界を守るために容赦しないでしょうから」
ロイリさんは、的確にボクたちの力を分析した。
「ママもニンゲンに肩入れするんか、ママ、いやロイリ様!」
「ニンゲンさんに厳しいのは、あなたの個人的な事情でしょうが。いい加減認めなさい。
ロイリさんに説教され、亜神は興奮が収まる。
ロイリさんが話の分かる方で安心した。
「ところで大毅さん、いかがでした?」
ロイリさんが、語りかけてくる。
「ルチャさんの記憶を見ていました」
「そうですか」
「なるほど。ロイリさんが亜神さんに対してやけに冷めているのが気になっていましたが、もう太古の昔から関係が冷え切っていたのですね」
「そうです。我が子を取られそうになったくらいで、親友に手をかけるなんて。ショックでした。あの子も、あなたに似て芯が強いですわ。だから、恐れていたのでしょう」
「待ってください。つまりボクは、亜神さんの血を継いでいるとも取れるのでしょうか?」
となると、ボクとチサちゃんは遠い親戚と言うことに。
「それは、あり得ません。たしかに、ルチャの血は流れています。ですが、亜神は遥か太古の存在。それに、あなたの先祖は魔王になることをやめました。もうあなたと亜神とは、縁もゆかりもございませんわ」
他人同士が『同じ人間という種族同士だから、自分たちは兄弟だよね』と主張するのと同じってわけか。
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