第92話 秘訣はスキル振り

「そんな。チサちゃんだって疲れているのに」

「わたしはダイキがいるから平気。でも、ダイキは人間だから、マナが尽きると死んじゃう」


 こんな必死な顔をしたチサちゃん、初めて見たな。


 ボクの身体に精気が漲ってくる。ボーッとしていた頭が、晴れ渡ってきた。


「もう安心。よかった」

「ありがとう、チサちゃん」


 ボクたちは、二人で抱き合う。 


「こちらも全力だったのに。いくらチサ様の力が強大でも、ダメージは免れないはず」

「殺すつもりで、撃ったんですか?」

「はい。それが礼儀。へたに手を抜くと、チサ様を信用していないことになります」


 チサちゃんが絶対に耐えてくれるからと、全力でビームを撃つなんて。ボクには考えられない思考だ。


 これが異世界の常識か。


 ボクには分からなくてもいいや。 


「そうか分かったぜ、ダイキ!」

 誰よりも先に、ドレンは正解へと辿り着いたらしい。


 同じ玉座だ。考えることは同じか。


「あはは、分かっちゃいましたか?」

 マナを使い果たし、ボクは膝を突く。


「何が分かったのです、ドレン?」

「ダイキのヤロウ、【黒龍拳】にスキルポイントを全振りしたんだよ!」



 ボクは保留にしていたスキルポイントを、全部【黒龍拳】に注ぎ込んだ。そのおかげか、無傷で済んでいる。ボクの作戦は成功した。ただ、黒龍鱗の形成でマナも底を尽きたけど。



「ボクはただ、ルチャの記憶に則っただけで」


 あのとき、ルチャは自分のマナをすべて燃やして、女の子をかばっていた。


「チサちゃん、ボク、受け止めきったよ」

 ボクは、抱きしめているチサちゃんに声をかける。


 安心しきったように、チサちゃんは微笑んだ。


「どうする? まだやる?」


 チサちゃんが尋ねると、セイさんは膝を突く。


「いいえ。これ以上は無意味です。参りました」

 ようやく、セイさんが降参した。


「やったわねチサ、ダイキ!」

「おめでとうございます」

 マミちゃんとケイスさんが、ボクたちにとびつく。


「正直、もうダメかと思ったぞ!」

 エィハスが、ボクたちに駆け寄る。


「うむ。実に見事である。さすが我の仲間」

「あんなの、ドワーフのアイテムでも防げなかったよ!」

 ゼーゼマンがゆっくりと歩み寄り、オンコがチサちゃんのホッペをツンツンした。


「あーあ。負けちまったな。やっぱパイセンはすげぇや」

 ドレンも、元の姿に戻っている。


「それでもすげえな、ダイキは。チサからのサポートがあったとはいえ、オレの必殺技を受け止めてしまうなんてよ」

「あれで、本当にボクらの勝ちでいいの?」


 ボクたちからは、一撃も攻撃していない。


 ドレンの性格なら、納得いかないのでは?


「構わんさ。最大攻撃を防がれた時点で、お前らの実力は分かったからな」

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