第89話 対決、魔王チサちゃん VS セイさん
「はっはぁ! 思い出すな、セイ。お前とこうして再び戦場を駆け抜けるってのは!」
「ええ。あのとき、我々は無敵でしたね。並み居るL・Oを返り討ちにし、勇者をも撤退させたほどでした。自分たちがL・Oに墜ちるまで」
二人が、当時を熱く語る。
「ドレンが話していた昔話って、セイさんとの思い出だったんですね」
「そうだ。オレとセイは、無敵だった。強すぎて勇者に討伐されるまではな」
頭脳派のセイさんと、パワータイプのドレンなら、伝説級の活躍だっただろう。
「そして今、オレたちはまた伝説を駆け上がる! やるぞセイ!」
「心得まして!」
ドレンの中にいるセイさんが、レバーを引く。
ゴーレムのパンチが飛んできた。
その一撃は、ビルを壊す鉄球付きクレーン車を思わせる。
「うわ!」
とっさに身をかわす。ボクは避けるだけで精一杯だ。
「どうしよう。勝てないかも」
「あれをよけただけで、十分すごい」
ブンブンと、ドレンが手足を振り回す。
「どうしたどうした、チサ公! 逃げてるだけじゃ、オレは倒せないぜ!」
攻撃を繰り返しながら、ドレンが煽ってきた。
「ただの挑発。相手だってキツい」
チサちゃんは、ドレンの狙いに気づいている。
「大丈夫、分かってる」
あくまでも冷静に対処を。
コンビネーションに、シッポ攻撃まで追加された。
すかさず、ボクは幼剣PPで受け流す。
「へ、よく気づいたな。キレて突進してきたら、こいつでカウンターしてやろうと思ったのによ」
悔しそうに、ドレンはシッポで地面をバンと叩く。
お互いに、突破口を掴めない。
チサちゃんの魔法で一発かませば、おそらく勝てるだろう。
しかし、当のチサちゃんに動く気配がない。
多分だけど、戦いたくないのかも。
「だったら、これでどうだ!」
ドレンのシッポから、尾ひれが外れた。
分離した尾ひれが、ひとりでにボクたちへ殺到する。
「尾ひれを手裏剣にしてる!」
「PPを振り回して!」
ボクはチサちゃんの前にPPを突き出す。
「おおおっ!」
手でPPをクルクルと回転させた。
尾ひれ手裏剣を、PPで弾き飛ばして凌ぐ。
「チサ様、甘いですわ。もっと本気で来てくださらないと」
セイさんの懇願にも、チサちゃんは答えない。
何か手を考えている。
「あの、もっと平和的な戦闘方法はないのでしょうか? マミちゃんみたいにゲーム勝負とか」
どうして、二人が争わなきゃいけないんだ?
「方法の決定権は、こちらにあります。チサ様は、受けてくださるだけでよいのです」
「とはいえ、埒があかねえ! 奥の手で行くぜ、セイ!」
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