第88話 ファイナル・ドレン

「ドレンも、そう思うの?」

「おうさ。オレは一度、ケイスに負けてるだろ?」


 言われてみればそうだ。

 ただ、マミちゃんが戦闘狂で、手当たり次第にケンカを売っているからだろう。

 経験値の差で勝ったと思える。


「悪いがダイキ、テメエには油断しねえ。パイセンから授かったその力、見させてもらう。手加減しねえから死ぬ気で来いよ!」


 セイさんが、ドレンの首に座った。


「お許しを、チサ様。これも、お二方の信頼を試すテストでございます」

「セイ、本音を言うと、一度本気で戦ってみたかった」

「そうおっしゃっていただけて、光栄に思います」


 チサちゃんも、覚悟を決めている。


「セイに気を使っているのなら、ご遠慮なく。セイに対してペナルティを科す気はございません。遠慮なく、セイをぶっ飛ばしてくださいな」

 ロイリさんの解説を聞き、ボクも気持ちを引き締めた。


「分かりました。気を遣わなくていいなら」

 ボクは幼剣PP《プラム・プラント》を構え、向き合う。


「その姿、もはや一心同体と言うわけですね、ドレン、我々も」


「おう!」

 何を考えているのか、ドレンはセイさんをリフティングして、天高く打ち上げた。

 セイさんの方も、重力に身を任せ、抵抗しようとしない。




「合・体!」




 号令をかけて、ドレンが口を開けた。

 セイさんは何の迷いもなく、ドレンの体内へ吸い込まれていく。


「セイさんが、食べられた!?」


 開始早々に仲間割れか?


「違う、ダイキ! よく見て!」

 チサちゃんの指先は、ドレンの腹部を差していた。


 ドレンの腹が半透明になっていて、コックピットのようになっている。 

 セイさんが、中でレバーやコンソールを操作しているではないか。


「ロボットか!」

 ボクは思わずツッコんでしまう。


「変・形!」

 またもドレンは号令を掛けた。


 ドレンの頭部が、背中へと折りたたまれる。


 背びれを伝い、首は腰の辺りでストップ。

 長いランチャーへと変形した。腕や足も、人間の形へと最適化される。

 首の下から、人間の顔をした頭部が生えた。

 顔は、セイさんによく似ている。




「完・成! ファイナル・ドレン!」




 巨大ロボットになっちゃったよ、あの二人。




「すごーい! アハハハ!」

「のんきに手を叩いている場合ではございませんよ、マミ様」

「だって、超かっこいーじゃん! アタシが戦いたかったわ!」

「ええ。是非とも次は、お手合わせ願いたく」

 マミちゃん・ケイスさん組は、楽しげに語らう。


 もはや、その姿は「夕方のアニメに出てきそうなロボット」と形容していい。

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