第84話 セイさんの正体
「せ、セイさん?」
どういうことだ?
セイさんは、この試合には無関係である。
どうして水を差すようなことを?
「マミ、大丈夫?」
チサちゃんには、マミちゃんの方が心配らしい。
胸を揺すっている。
一方マミちゃんの方は、ふにゃーと気持ちよさそうに眠っていた。
無事ではあるみたいだけど。
ケイスさんが側に着き、マミちゃんの壁役を務めている。
「強力な睡眠薬を飲ませております。身体に害はございませんので、ご安心を」
セイさんが、「お帰りくださいませ」と、ケイスさんごと城から担ぎ出した。
「ぬお、何をなさいます?」
「ここから先は、真剣勝負にございます」
ケイスさんとマミちゃんが、城の玄関から放り出される。
「二人をどうしたの?」
「元の世界へ、お帰りになっていただきました。話はございませんので」
一瞬の出来事だった。ケイスさんが対応できないなんて。
「ご心配なく。マミ様は合格でございます。ですが、チサ様は追試を受けていただきます」
「敵は、マミちゃんじゃない?」
「わたくしは、どちらか勝った方が魔王に相応しいと申したまで」
そういえばそうだ。
セイさんは、「マミちゃんとチサちゃんのどちらかが」とは言っていなかった。
つまり、本当に戦わないといけないのは。
「うわ!」
立っていられないほどの地震が発生し、地鳴りが響いた。
「チサちゃん!」
ボクはとっさに、チサちゃんを抱き寄せる。
同時に、地面に穴が開く。
赤いドラゴンが、セイさんの元に舞い降りた。
あれはドレンではないか。
城がボロボロだ。
「メイドさんたちを助けないと」
「ご安心なさいませ。彼らには暇を取らせております」
何もかも、周到に計画していたらしい。
「どうしてこんなことを、セイさん!」
「もう、ワタクシは、あなた方が知っている側近ではございません」
ドラゴンの翼が、セイさんを包み隠す。
セイさんの服装が替わっていた。
いつものタイトスカートから、まるで花魁のような、艶めかしい着物姿になっている。
「ワタクシはセイレーン・ビショップ・ギャラクシー。かつて魔を極めし者。この世界を統べていた、元魔王なり」
セイさんが、元魔王だったってこと?
「つまり、あなたはL・Oなんですか?」
「はい。わたくしはかつて、この地を治めていた魔王でした。しかし、横暴な政策のために勇者に狩られ、力を失いました。今は、L・Oに落ちぶれています」
本当だったんだ。
「それがどうして、今になって?」
「指示書にそう書かれていました。力を返すから、あなた方を妨害するように、と」
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