第七章 闇の授業参観! 幼女魔王 対 豊満魔王

第83話 ぼへええええ!

 あれから一週間後、ポージュースは飛ぶように売れた。


 効果が高い上に、安価で手に入るところが評価されたのである。

 ヱッチからもらった特大ミカンを、隣で切り売り販売したのがウケたんだとか。

 今後はポーションの販売は取りやめ、ポージュースに絞るという。

 ジュースを改良した方が早いらしい。


 絞りかすを食べさせた牛肉の方も、味がまろやかになったと評判だ。肉が柔らかくなっているという。他の家畜も同等の評価を得た。


 王族や貴族に目をつけられるかも、と思ったが、オンコがうまく取り引きの交渉をしてくれたらしい。

 おかげで、平民をエンドユーザーにする状態は維持している。

 

 チサちゃんとマミちゃんが砂遊びをしていると、亜神から通知が届く。


「魔王チサ様、ロイリ・ス・ギル様及び玉座・亜神様より通知です」


 いよいよ、亜神の審判が下る。

 チサちゃんが魔王に相応しいか、この報せで決まるのだ。


「なお、魔王マミ様にも、同様の通知がございました」

 亜神からの手紙は、二通ある。


「アタシのも来たの?」

 マミちゃんが自分を指さした。


「ここにいらっしゃることは、亜神様も把握なさっているようです」


「見せて見せて!」

 マミちゃんに急かされ、セイさんが書類の封を切る。


「なんて書いているの?」

 待ちきれない様子で、ケイスさんを踏み台にして身を乗り出す。


「ぬほぉ❤」

 ケイスさんも、幸せそうな様子だ。


 この二人は、色んな意味で相性がいいなぁ。


「お二人とも、おめでとうございます。合格です」

 書面を読み上げ、セイさんが涙ぐんだ。


「やった!」

 諸手を挙げて、チサちゃんが喜ぶ。


「アタシも合格よ! よかったわね、チサ」

「おめでとうございます」


 マミちゃんと、ケイスさんが祝福してくれる。 

 二人もいつか、結ばれるのだろう。


「では、魔王の生き残りをかけて、戦闘試験を行ってもらいます。勝った方が、魔王の最有力になります」


 セイさんが、号令を掛ける。


 ゆるふわなひとときが、終わりを告げた。


 ここから先は、真剣勝負である。


 ビリビリとした空気が、ボクの肌に触れた。

 皮膚が泡立つような熱気が、漂ってくる。


「負けないわよ、チサ」

 マミちゃんが立ち上がった。

 いつもの陽気さは兼ね備えているとは言え、遊びではないと伝わってくる。


 これはもはや、ゲームではない。


「こっちこそ、マミ」

 ボクから離れ、チサちゃんも起き上がる。


 チサちゃんの放つ気迫に圧倒され、ボクは身動きすら取れなかった。

 近づけない。




「ここから先は真剣勝負。どっちかが倒れるまで――」




 だが、マミちゃんから攻撃が来ることはなかった。




 拳を振るおうとした刹那、背後から何者かの手でポージュースを飲まされたのである。


「ぼへえええ……」


 蕩けた顔になって、マミちゃんが腰抜けになってしまった。


「マミ様ぁ!」

 愕然とするケイスさん。


 チサちゃんは、何もできなかった。マミちゃんを倒した相手が、予想外の人物だったから。


「どうして、セイ?」



 彼女にジュースを飲ませた人物は、味方であるはずのセイさんなのである。

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