第69話 幼剣《ようけん》 PP《プラム・プラント》

「よくきたね、二人とも」

 オンコのお城に招かれた。ただし、今日は正門からは入らない。裏からお邪魔する。


 工房は山の方にあると、オンコはいう。


「こっちだよ」


 城を囲んでいる山の間を抜けていく。



 山にある大きな小屋に、ボクたちは案内された。


 ガンゴンと、けたたましい音が鳴り響く。


「おお、オンコ姫さま。わざわざいらしてくれたのですか」


 一人のドワーフが、オンコに気づいて作業を止めた。


 ドワーフたちの身体からは、汗が噴き出す。相当熱いのだ。


「頼んでいた武器は?」


「できてます! 今お持ちしますよ!」

 大将らしきドワーフが、スコップを持ってくる。


「うわあ」


 スコップが、見違えた。

 龍のウロコを思わせる滑り止めの装飾が、長い柄に施されている。赤いドラゴンの口から、幅広い刃が飛び出していた。偃月刀ではなく、スコップなのは相変わらずだけど。



「名づけて、【幼剣ようけん プラムプラント】といいます! 元の素材が良かったので、腕のふるい甲斐がありましたよ。いやあ、いい仕事をした!」

 誇らしげに、ドワーフ大将は語った。


 日本語に訳すと「幼剣 梅鉢うめばち」か。まるで武家の家紋みたいな名前だね。


「アンデッドにも攻撃できる」


 武器がこれだけすごいんだ。防具はもっと期待していいかも?


「お待たせしました。魔獣のレザーアーマーでございます」

 ドワーフさんに手伝ってもらい、新たに作られた革鎧を着せてもらう。


 外装はつなぎ目に金属板で補強されていて、すばらしい。

 モコモコしていた見た目も、いかにも頑丈そうな質感に変化している。

 濃いパープルの色彩も、見た目からして強そう。


 これもう、最終装備でしょ。

 見た目はクマの着ぐるみのままだけど。


 かと思えば、ボクのヨロイにベルトが装着されていく。

「え、何コレ?」

 ヨロイのお腹当たりに、奇妙な座席が取り付けられていた。


 どこかで見たことがあるなと思ったら、あれだな。「ママチャリのカゴ側に取り付ける、赤ん坊用の腰掛け」じゃないか。


「待ってください! こんなの、オーダーしていませんよ?」

「チサ様が『やはり玉座に相応しい装備を』とご希望なされましたので。いかがでしょう」


 いかがっていわれても。



 チサちゃんが乗り込んで、耐久性を確かめる。ヨロイとイスを固定しているベルト類の器具を引っ張り、確認していた。


「座り心地はまあまあ。ベルトの強さも、これでいい」


「光栄にございます」

 ドワーフさんは満足げである。


「魔獣の革が、こちらでも余っておりましたので、膝掛けにいたしました」

 カンガルーみたいな見た目になったよ?

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