第63話 ゴマトマ王

 長い廊下を歩き、王の間へ向かう。

 窓の向こうに、鉱山が一望できた。


「管理者だと、窮屈じゃないのか? 不自由な気がするが」

「兄が二人いるから、城の管理はそっちに任せているよー」


 オンコが、エィハスの質問に答える。


「上から長男ゴシャ、次男イッサって兄弟がいるよ。アタシは一番下で、特に権限はないよ」


 兄妹『オイシャサンゴッコ』のアナグラムだな。



「ダイキの話をしたらさ、是非とも会いたがっていたよ」



 長男は城の騎士団長でパトロールへ、次男は街の領主であり、二人とも留守らしい。


「父ちゃん、連れてきたよ」

 まるで友達でも誘うかのように、オンコはゴマトマ王の前に。


 ドワーフの王様は、立派な玉座に座っていた。

 白い袴姿で。


 腕が盛り上がっていて、風格がある。

 やっぱり、玉座って無機質だよね。


 ボクたちは、王の前にひざまずく。


 チサちゃんもマネしようとしたが、慌てて王様が止めた。 


「ああ、あなたは頭を下げずとも。気が利かず申し訳ない」


 いつものように、チサちゃんはボクにあぐらをかかせて、チサちゃんはちょこんと座る。


 頭を下げなくていいのかな。ボクは自然と俯きがちになる。


「私がこの一帯を納める、ドワーフの王・ゴマトマである。此度の働き、見事であった」

 王様が、ボクたちに頭を下げた。


「特に魔王チサ・ス・ギル殿。あなた様がトドメを刺したとか」


「倒したのは、わたしじゃない。相手は異常性癖の持ち主だった。わたしが手を出せば、かえって強化されてしまう可能性があった。よって、ここにいる玉座ダイキに全権を委ねた」


「ほう、玉座殿が!」


 玉座というジョブがさも普通にあるように、会話が進んだ。


「ではダイキ殿とやら、お主がヱッチを討伐したと?」

「そうなります」

「ヱルダー・リッチが相手だったとは。ドワーフの腕力が通用しないのでおかしいとは思っていた」


 王様によると、ドワーフが狙われたのは、対アンデッド武装を作らせないことが目的だったらしい。

 しかし、生体エネルギーの塊であるボクだから打倒できたのだ、と。


「是非とも礼がしたい。困ったことがあればいつでも言って欲しい。協力しよう」

「では国王、ダイキの装備を見直して欲しい」

「心得ましたぞ」


 ボクは装備すべてを、ドワーフさんたちに見てもらうことに。


「ほう、これだけでも何の手入れをせずとも使えますぞ」

 ジイヤさんは、ボクの装備を見ては感心してばかり。


「そうそう。オヤジ、これ見つけてきたよ」


 懐から小さな鉱石を、オンコが取り出した。

 鉱石はオーロラのように、表面がユラユラとした光を放つ。


「おお。これは対アンデッド用の魔法鉱石! ようやく見つかったのか」

「あのエルダー・リッチとか言うヤツが、魔法石の鉱脈を隠していたんだ」


 オンコが発見したがっていたお宝って、このことだったんだ。


「では、ボクの装備を実験台にしてください。いいよね、チサちゃん」

「あれはダイキのモノだから、ダイキの好きに使って」


「ありがとう。というわけで」

 ボクは、装備を実験台としても提供した。


「この先、どんな相手が来るか分からない。強い装備を」

「承知いたしました、魔王サマ」

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