第57話 オンコの正体
「申し訳ありません姫様ぁ! お留守の間にヱルダー・リッチが我々の魂を糧に復活しまして、幽閉されていたのです!」
周りのドワーフも、大人子どもと言わず、オンコの前にひれ伏す。
「ゴマトマ鉱山を警護することができず、なすすめなく! ですがこうして姫様のお側に仕えられる日が再び来ようとは! 魂を抜かれ、腑抜けのまま死んでいくのかと諦めていたのです!」
「待ってよ爺や、大げさすぎなんだけど?」
「ですが、姫様の手を患わせてしまいました!」
二人のやりとりからすると、オンコはドワーフの中でも相当偉い人ってコトになる。
「ひょっとして、オンコってすっごいエラい人?」
「まあね。ゴマトマじゃあ、アタシの家が一番エラいかな?」
オンコがケロッと言う。
爺やという筋肉がオンコをかばうようにして立つ。
「こちらにおわすは、ドワーフ族の姫君、オンコ・ゴマトマ様でありますぞ!」
礼をわきまえろと言いたいんだろうけど、ねえ。
「あのさ、このチサちゃんは魔王だよ。あと、ダイキは玉座なんだけど? ついでに、アンタ達をすくったのもこの方たちだから」
爺やさんが、ボクたちとオンコを交互に見る。
「なんと、魔王サマの! これは失礼を。姫をお守りくださり、また我々も救ってくださって感謝いたします」
「アタシからもお礼を言わせて、ドワーフを解放してくれてありがと、ダイキ、それにみんな」
いつも活発なオンコが、珍しくしおらしくなった。
「いえ、何も知らされてなくて」
まさか、ドワーフが幽閉されているなんて思っていなかったし。
「なんと謙虚な。わかり申した。我々にできることは何なりと!」
「じゃあ、ダイキの装備を見てあげてね」
「お安いご用で! 助けていただいたお礼として、特別に無償でやらせていただきます」
ボクの装備を、なんとタダで見てくれるらしい。
「ホントにありがと、チサちゃんにダイキ。パーティのみんなも。よかったらお城に来てね。おもてなしするよ!」
オンコから、パーティに誘われた。
「今日はセイが食事を用意しているかも知れない。エィハスの店へお弁当のお礼もする。明日でいい?」
「それでいいよ。あと、荷物は爺やに任せな」
領地の中央にチサちゃんの城があり、ルセランドの街は城の東、ゴマトマ鉱山は城の北にある。
「いいでしょ、爺や」
「お安いご用で」
爺やさんの好意で、棺は彼らが持って行ってくれることに。
オンコも城へ状況を報告しに行くという。
「本当にいいのかな、持っていってもらって」
「いいと思う。それに、ダイキは手空きの状態でいた方がいい」
「どうしてさ?」
「ギルドを問い詰める必要がある。拳で」
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