第54話 レベルとは?

「聞いてもいい?  この世界のレベルって、どんな感じなの?」


「人間で平均レベルは一〇。レベル二〇もあれば超人クラス。だから、レベル四〇以上もあるダイキは驚かれた」

 チサちゃんが、この世界のレベル要素を解説してくれた。


「じゃあ、目の前にいるのは凶悪な化物なんだね?」



「国が動くレベル」




 さすが、元魔王候補だけある。




『我が野望を阻む者には、たとえ魔王と言えど容赦せぬ!』

 喋る度にいちいちポーズを取るのが、またウザい。


「お前はここで浄化する。覚悟を」


『ぬかせ半人前の魔王が! 仲間共々地獄へ送ってくれる!』

 祭壇から降りて、ヱッチは手をかざす。



 骨の手の中心が紫色に光り、死霊が湧き出てきた。



「精霊よ、邪気を振り払うのである。ふうっ!」


 片手に持った本を開き、ゼーゼマンはボクたちの周辺に障壁を張った。


 死霊は障壁にぶつかると、弾け飛んだ。


 まるで誘蛾灯のようである。


『なんの。防いでいるだけでは我は倒せぬぞ!』

 確かに、突破口はない。


「聖剣さえあれば。しかし、ドワーフが解禁されていないとなると、作るのは難しい」


 さしものエィハスも、弱音を吐く。


「ボクが行ってみる!」

 スコップを持って、ボク結界から出た。


「無茶だって。ダイキが死んじゃったら、チサちゃんが」

「大丈夫だ、オンコ。ボクの装備が一番マシみたいだから。チサちゃんはみんなを守っていてくれ」


 障壁を抜けて、ボクはヱッチと一対一になる。


「ダイキ、信じてる」

 チサちゃんも、手を貸そうとしない。

 ボクの意図を汲んでくれているのだ。


「もぐもぐ」

 今、お弁当食べるの?

 それだけ信頼してくれているんだろうけど。


 本当にボクは強いのか、このモンスターで試す。


『余裕だな、魔王チサ・ス・ギルよ。配下に全てを託すなど』


「お前なんかわたしが出るまでもない。それに、わたしが攻撃するとご褒美になるだけ」


『おのれ、我が性癖をことごとく!』


 チサちゃんは、こういう感性は本当に鋭い。

 相手の性癖を見破る力に長けている。


 その証拠に、ヱッチに飛びかからんとしているオンコを、片手で押さえ込んでいた。


 敵からすると、オンコが攻撃しても「女の子に虐げられる」ご褒美になるからだそう。


『しかして魔王、むさい男だけに任せて我を倒せるとでも?』

「ダイキは強い。全部任せられる」


『ほざけ、小娘が! この男を倒したら、お主を乗っ取ってくれる』

 ヱッチが、大仰なポーズを取る。


「やってみないと分からない。そりゃ!」

 闇雲に、ボクはスコップを振り回した。


『ぐう!』

 刃が腕や腰に当たり、ヱッチが苦悶の声を上げる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る