第51話 ダンジョンの構造
一歩進む度に、禍々しい気配で全身がビリビリした。
「魔物は危険。魔物は魔王候補を倒すと、自分が魔王に成り代われる。負ければ消滅する。だから必死」
ボクはチサちゃんと手を繋ぎ、着実に歩を進めていく。
ダンジョンは石造りである。
何年も昔から建設されたように、しっかりとしていた。
薄暗いとはいえ、灯りまで生きている。
「待った」
突然、オンコが先回りして、パーティを停止させた。適当な石ころを、前方に放り投げる。
床が口を開け、小石を飲み込む。再び床が閉じた。
「落とし穴のトラップだね。見てて」
壁を触りだして、レバーを見つける。
慎重にレバーの外壁を外した。
レバーの内部には、導線がびっしりと張り巡らされている。
オンコはナイフで導線を切り、罠を解除した。
その後も、オンコは脇道を見つけては宝箱を開けていく。
箱の中身はポーションや装備類などである。
ドワーフが作った品なので、価格も高く性能もいいらしい。
「見て、【力たすき】だって、パワー系のダイキが装備しなよ」
梵字のような模様が描かれた布製のヒモを、オンコが宝箱から見つけた。
「え、でもいいの? オンコが取ったのだから、キミのものにするのが」
「これ、腕っ節が上がる特殊装備だから、アタシが持っててもしょうがないんよ。それにパーティでしょ? 装備は共有しよ」
なら遠慮なく、装備させてもらう。
革鎧を脱いで、身体にたすきを結ぶ。
なぜか、チサちゃんが興奮気味だ。わくわくしている。
途端に、筋肉が引き締まった。なんか強くなった気がする!
「それにしても、広い迷宮だね」
勝手に灯る明かりや、石製の壁。
洞窟を掘っただけでなく、補強まで施しているのだ。
「どれだけの人数で建築したんだろう?」
「一人である」
「え、マジで? これだけ複雑な迷宮を一人で作ったと?」
「至る所にドロリとしたマナが走っておる。高名な魔術師なら、一晩で広大な迷宮を作り上げたりするのだ」
手を這わせて壁を調べながら、ゼーゼマンが接着具合を確かめる。
ボクには分からないが、ゼーゼマンには構造が分かるらしい。
「本気を出したら、ゼーゼマンでも作れるの?」
「イヤだ。めんどくさい」
迷宮を作るのは、作る理由があるからである。
世俗にまみれたいゼーゼマンには建てる動機がないのだ。
「待ってくれ。ということは?」
エィハスが、何かを察する。
「左様、侵入はバレていると思ってよい」
あまりの事実に、ボクは前へ進めなくなった。
これから何が起きるのだろう?
「迷宮のマナを消滅なんてされたら、押しつぶされるかも!」
「その心配はない。これだけ精巧な迷宮を維持するには、最深部にずっと隠遁せねばならぬ。もしマナなど断ち切れば、真っ先に我が身が圧死するなり」
ボクが危機を訴えると、ゼーゼマンが納得のいく解説をしてくれた。
だから、ダンジョンのボスって一番奥にいるのか。納得した。
何をするにも配下を使うのだって、ダンジョンの維持が理由なのかも。
最強魔術師であるゼーゼマンが、ダンジョンを作らないわけだね。
「だが、妨害がないとは言っておらぬ。くるぞ!」
ゼーゼマンが杖と本で武装した。
他のメンバーも身構える。
武装した数体のスケルトンが、ボクたちの前に!
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