第48話 オンコの依頼

 え、なんか妙だな。

「さっき、財宝が目的って言ってなかったっけ?」


「財宝は個人的に欲しいだけ。見つからなかったら、依頼が終わってからもう一回潜って探すよ」

 

 オンコの、おちゃらけた雰囲気が陰る。


「依頼って言うのは、ドワーフを苦しめているモンスターの討伐なんだ」


 聞くと、ドワーフたちはみんな、突然現れた正体不明のモンスターによって、捕まっているという。

 鉱山近くの霧が立ちこめるエリアに、全員が幽閉されているらしい。


「アタシは別の仕事をしていたから、無事だったんだけど、家族が」


 無事であることは確認されている。

 でも、時間の問題だろう、と。


「強いの? モンスターって」


「分からない。ただ、ドワーフの力が通じないかも知れないと、エルフのゼーゼマンを頼って仲間を募ったんだ」


 それが、ボクたちだと。


「わかった。助けに行く」


 敵の正体は不明、力量も分からない。

 だけど、助けに行くという。

 それでこそチサちゃんだ。


「チサちゃんが行くなら、ボクもやる。だから心配しないで」



「ありがとうチサちゃん! 魔王がいるなら百人力だね。お礼はちゃんとするから」


 少し元気になったのか、オンコは食欲を取り戻す。

 こういうときこそ、しっかり食べておかないとね。


「オンコ、チサはいい子だな」

「うん。最高の仲間だね!」


 仲間、か。チサちゃんは、いい仲間に恵まれているなぁ。


「ダイキもありがとう! 依頼が片付いたら、ウチへ遊びにきなよ。ご馳走するからさ」

「ありがとう、オンコ。お世話になります」


 ボクも、チューリップをモリモリと腹に詰める。


 気がつけば、あれだけあった唐揚げマウンテンは、すっかり更地になっていた。


「ごちそうさま」

 チサちゃんが、手を合わせる。


「気に入ってくれたら、またおいで」

 これは、毎日でも飽きないおいしさだ。


「はいこれ、お弁当だよ」

 帰り際に、バニングさんが大きな包みをくれた。チューリップ唐揚げのいい香りが漂う。


「これを作ったの、息子なんだ」

 バニングさんが、厨房の向こうへ目を移す。


 小さな頭が、厨房からこちらを覗いている。

 少しでも役に立ちたくて、作ったらしい。


「ありがとう、おいしそうだよ」

 ボクが礼をいうと、息子さんはパアッと明るくなる。


「バニングさんすいません! ごちそうさまでした!」

「おばちゃん、ありがと。大切に食べる」


 お弁当は、チサちゃんのアイテムボックスへ。


「うふふ、またおいで!」


 バニングさんに見送られ、ボクたちはゴマトマ鉱山へ「おさんぽ」に出かける。

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