第47話 オルエーのエルフ

「だからさ、どんな奴でもいいから一緒に組ませてくれって、アタシがエィハスにせがんだんだよ」


 オンコが、エィハスの首に抱きつく。


「ダイキ殿、オルエーの件は世話になったのである」


 言っている意味が、よく分からない。


「当時、ボクはゼーゼマンと接点なんてありましたっけ」


「いや、ワシというよりエルフが世話になったのである」


 エルフが?


 倒したゾンビエルフのことかな?


「ほぐほぐ」

 チサちゃんが何かを話そうとしている。


「口の中のチューリップを飲み込んでから話そうか」


 ボクが促すと、チサちゃんが唐揚げを飲み込んで話し直す。


「オルエーの森には、エルフが住んでいる」


 チサちゃんの解説で、ようやく事態が飲み込めた。


「あの森一帯は、エルフの里なんだ。薬草が生えているのも、周辺の草木がエルフのマナを取り込んでいるからなんだよ。良質の薬草が採れる」


 エィハスに翻訳してもらわなかったら、何を言っているのか分からなかったよ。


「ワシは、オルエー出身である。あそこは閉鎖的すぎて、世界の理を学ぶには窮屈でな。それで、自由な冒険者になった」


 本来なら、彼もバニングさんの依頼をウケるつもりだったとか。

 しかし、別件でギルドを離れられなかったらしい。

 女性の尻を追いかけていたわけではなかったのか。


「でも、ボクは弱いよ?」

 森でも役に立たなかったし。


「ほほう、そんな豪華な装備をしていて謙遜するであるかね?」

 一発で、ゼーゼマンがボクの装備がすごいと見抜く。


「そうだよ。店売り品みたいに偽装コーディングしているけどさ、そんなの膨大なマナでわかっちゃうから」

 オンコまで。


 強力なカモフラージュ魔法は、漂うマナの気配で見破られてしまうらしい。

 少なくとも「マナで覆わないといけないくらい凄い装備」ということだけは分かるという。


 凄腕冒険者って、やっぱり侮れない。


「弱かったら、ウチらが守ってやればいいし。最悪、チサちゃんを守れればいい」


「それがいいよ。危なくなったら、ボクなんて見捨ててくれていいから」


「ノンノン。アンタを守ることが、必然的にチサちゃんを守ることになるんだよ」


 言ってしまえば、ボクはチサちゃんのマナ貯蔵庫だ。

 ボクが死ねば、チサちゃんのマナまで減ってしまう。

 ボクに危害が及ばない方がいいらしい。


「っと、いうわけで、冒険は我々にお任せあれ。若き冒険者殿よ」 


 下手に動かない方がいいね。


「そんな若き冒険者にお願いがあるんだよ。この仕事は、アタシの依頼でもある」

 神妙な面持ちになって、オンコが語り出す。


「鉱山に住み着いたモンスターを、倒して欲しい」

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